「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」 | 雑踏に紛れて

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「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」

 

12話。多分シーズン1かな?

どう考えても尻切れで終わってしまった。

 

 

しかしこの完成度の高さ。

基本的に怖いものは見ないのだけれど、これは怖くない(笑)

 

とにかく死体と骨がやたらと出てくる。

勿論、それがテーマなので、当たり前だ。

 

主人公の櫻子さんは、骨の標本士なのだが、ともかく骨を愛してやまない。

まぁ、色ーんなマニアが登場するアニメの世界にあって、何の不思議もないけれど。

そして、予想を裏切らず、その遺された骨から、様々な独自の推理を展開する。

 

これは何だっけ、京都寺町三丁目のホームズ的な、そういう要素だ。

あれは確か、骨董品を巡って、色んな事件を解決してゆく、そんな話だった。

 

似ているようではある。

あっちは目利きの鑑定士、こっちはプロの骨の標本士。

 

骨はよくよく見ると、それがもう生前の姿を饒舌に物語るかのように、

情報の詰まったひとつの証拠となり得る。

 

つまりは、見る人が見れば、それはある程度かも知れないが、

一目瞭然の事実真実をつまびらかに教えてくれるのだ。

 

そうやって、過去に囚われし人々の思いを、

一見、冷淡に見える主人公の櫻子さんが一つ一つ紐解いてゆくパターン。

 

しかし、これがだね、なかなかいい。

鋭すぎるのはこれはもう鉄板だからいいとして、

骨を愛するというそのかなり特殊な事例を初期に設定し、

そこから派生する生物の仕組みを事細かに描写して、

なーんとなく、分かったような気にさせられて、事件はいつしか解決してしまう。

 

伏線が色々張り巡らされていて、それを、ちょっとずつ軽やかに回収してゆく様は、

本当に気持ちがいい。

 

何せ、主体となるテーマが、遺体だ。

 

どんな絵になるんだろうと思っていたけれど、

思っていたよりずっときれいで、そこには「死」という完全な状態が、

未だ遺された者たちを翻弄するようにまざまざと生き返って話でも始めるかのような、

そんな心持ちになる。

 

死体は、一旦その生物の死、という一つの区切りを迎える。

しかし、それは、食物連鎖やら自然の摂理から言って、一瞬の小さな生物たちの楽園となるのだ。

 

うーん、確かに。

 

死体に群がる多くの生物は、正直気味が悪いけれど、

僕が心を打たれたのは、その言葉だった。

 

まぁ、社会的にそういうのは、特に人間に関しては許されていないわけで、

食物連鎖だ何だってことになると、当然遺棄事件となって大問題だ。

 

でも、そこにある死体は、生前何を思っただろう。

そしてそこに居合わせた人々の気持ちや、遺され時が止まったかのような人々。

ここが最重要テーマだ。

 

要するに、ひとつの区切りではあるその一度は葬られた「ハズの」もの。

だがしかし、勿論それはいつだって、本当に正しいわけではない。

何事もない死、なんてものはこの世に一つたりともありはしないのだ。

 

そこでやっと、櫻子さんと、もうひとりの高校生の主人公が、

温かみを持った純粋に生きている人の心という形で、物語が進行する。

 

北海道の旭川が舞台であるけれど、

こんなの見てしまうと、そんなに死亡事件が多い場所なのかと思ってしまうほど(笑)

 

いや、そんな筈はないのだが、実際死体とはあまり関係のない話も出てきはするのだが、

そこはやっぱり、骨に絡んだ話が圧倒的に良くできている。

 

筋書きは勿論、事件や事故から入るのだけれど、そこに乗っかてくる推理が、

徐々に真実への間合いを詰め、ひとつのクローズドサーキットになる時、

劇中では「骨が繋がった」と表現しているのだけれど、これはとても的を得ていて、

何だか、普段からそんなことを思わず言ってしまいそうな勢いでもある。

 

そして、櫻子さんの決めゼリフ。

 

「さぁ、ナゾを解こうじゃないか」

 

ここの大袈裟なシーンが、最高にいい。

毎度出てきて欲しいのだけれど、後半は少なくなってしまうのが残念だ。

 

 

・・・で、ここからはいつもの持論。

 

そりゃ、普通に生活していれば、死体になんてそうそうお目にかかる機会はない。

もしそんなことになったら、取り敢えず腰を抜かしてしまう自信はある。

 

身近にあるのはせいぜい、小さい虫とかそんなものくらいだろう。

ちょっと大きな虫だって、僕は軽く悲鳴を上げて、目眩がするくらいのことは間違いない。

 

それが、骨。

 

ちょっと相当に不気味である。

でも、だからこそ題材としてはいいのだろう。

標本士なんて職業だって、かなり特殊なものだろうし、

うん、何故なら、そんな職業に就いている知人友人は1人もいないから。

 

でも、思うのだ。

 

骨というものは、墓所に埋葬されるのが、基本的には当然なのだろうけれど、

当然、そこに行けば、骨なんてものはそれこそ、とんでもない数が埋まっているわけで、

それらが、もしも一斉に何かを饒舌に語りだしたら、なんて思うと寒気がするのだけれど、

それは本当に一つ一つが多くの思いや記憶や、もしかしたら怨念みたいなものも含めて、

その結晶であって、遠い歴史をずっと紡いできた証人の数々であるならば・・・。

 

うーん、一人の人間なんて小さいものかも知れない。

しかし、その数珠つなぎの骨たちは、きっと絶対に確かな真実を知っているのだろうな、

なーんて考えてみたり・・・。

 

僕にはそんな骨の実物を見た時に、推理なんて始めようとは思わないけどね。

 

 

 

僕が死んだら、誰か言ってくれるのだろうか。

こんなこと・・・。

 

 

「さぁ、ナゾを解こうじゃないか」