自立という言葉を聞くと「立って歩いて、自分のことが自分でできる」これが自立だと、入職した頃の私は思っていた。

 

今にして思えば介護の専門学校を卒業して介護福祉士を取得していたのに、とても恥ずかしい話だ。

 

狭義や広義における自立の定義についてはここでは省略をするが、自立支援という私たち介護職にとって最も重要な役割・責務を勘違いしている人がいる。

 

今日はそういう話をしようと思う。

 

 

 

過去にさかのぼる。

 

私が入職したころは介護保険制度が始まる前、いわゆる措置の時代だった。

 

この頃の特養は入所要件に要介護度3以上というルールはなく、そもそも要介護認定が今とは大きく異なり、それこそ自分のことを自分でできる利用者も多かった。

 

食事を例にあげれば半分以上の利用者がエプロンは使用せず、食べこぼしもムセ込みも殆どなく自力摂取をされていたと思う。

 

逆に食べこぼしや食べ方が分からなくなってきた利用者は職員が一方的に全介助をしていた。

 

それが正しいか間違っているか、まぁそういう『時代』だった。

加えて言えば今ほど職員に対する教育も広まっていなかった。

 

 

 

話を現代に戻す。

 

私は今から2年前、グループホームから特養に異動になった。

デイサービスや居宅にも異動をしていたので15年ぶりの特養勤務だった。

 

要介護度の平均は4.1。

エプロンをつけて食べこぼしも酷く、口の周りや手、衣類も食べ物でひどく汚れていた利用者が数名目に入った。

 

職員が介助をしている様子はない。

 

経験年数が長いとは言え異動してきたばかりの私はそばにいる自分より10歳以上は若い職員に「あの人は介助しないの?」と、聞いた。

 

「あ、『自立支援』なんで自分で食べてもらっています。」

その職員は当たり前のようにそう答えた。

 

その後、自分とは年代の近い主任級の職員にも同じ質問をした。

 

「自立支援だからね、自分で食べられる人は自分で食べてもらわないと。そこまで手が回らないよ。」

 

その主任はそう答えた。

 

 

“手が回らない“

 

そこの部分に関しては残念ながらよく分かる。

 

ただ少なくとも、私の“よく分かる”という部分と、おそらく施設の大半職員が捉えている自立支援に対する考え方は何か異なる気がしてならなかった。

 

 

先にあげたような食事摂取能力の利用者は10数名いる。

 

丁寧にアセスメントをすれば、その一人一人は当然『摂取動作』の能力には差がある。

 

「どうすればこの人が食事を自分で食べられるようになるのか?」

 

その工夫や支援内容こそが“自立支援”だと私は思っている。

 

 

半分まではいかないが、3分の1ほどの量を食べこぼし、手や口の周り、衣類が酷く汚れて食べている状態が、自立支援の結果であってはならない。

 

人手不足なのか、勉強不足が原因なのか。

 

 

理想と現実の差を埋めるためにも、私は利用者の能力を見極め、テーブルの高さや食事形態、自助具の必要性など、気持ちよく自分で食事摂取ができる『自立支援』をしていきたいと思う。