センサーが鳴る、職員が走る。

 

日中だけでなく夜勤ともなればどこの施設でもある話だろう。

 

 

私の勤めている特養は古い、古くて広い。

転落の危険のある人にはベッドにセンサーがついており、職員の持っているPHSと連動している。

 

しかし近年、このPHSの反応が鈍なってきておりセンサーに利用者が接触をしても鳴らないことが増えてきた。

 

設備の入れ替えには莫大な費用を要するが、利用者の安全には変えられない。

先日とある業者を呼び、新しいセンサーに関する説明会が開催された。

 

今日はその時の話。

 

 

新しいセンサーの受信機はPHSではなくタブレットだ。

居室の天井にカメラをつけて、利用者の動きが手元のタブレットで確認できる、というのが“売り”らしい。

 

今時と言えば実に今時だ。

 

実際に現状の課題としてPHSの反応の悪さはあるが、走っていっても寝返りをうっていただけとか、身体のごく一部がセンサーに触れただけとか、いわゆる「空振り」のこともよくある。

 

画面で確認をできれば無駄な仕事が減り職員の負担も軽減される。

 

 

業者が一通りの説明を終えて、「何か質問はありませんか?」と説明会に参加した職員達に声をかけた。

 

施設長や幹部職員も数名参加していたが、誰も声をあげないので私が真っ先に質問をした。

 

「貴社は利用者様のプライバシーに関してはどうお考えですか?また、実際に導入をされた施設は、ご家族や本人様にどのように説明をされたか伺っていたら教えてほしいです。」

 

今回の新しいセンサーの説明会が始まって数分もしないうちに私が抱いた疑問だ。

 

確かに誰かどう考えても現状の設備よりは便利になっている。

しかし“自分の生活を覗かれている”というプライバシーに関する配慮が根本的に欠如している、と私は感じてしまった。

 

「そうですね。プライバシーに関することは導入をした施設様にご家族やご本人様への説明をお願いしております。弊社としては転落や転倒を予防する、という利用者様の安全を一番に考えております。」

 

なんとなく予想通りの回答だった。

 

 

私が残念だった事はもう一つある。

 

私が気にかけていた権利擁護に関する質問が、一緒に参加していた相談員や施設ケアマネから出なかったことだ。

 

恐らくだが“新しい機会の導入”、とぐらいしか頭になかったのだろう。

そう思わざるを得ない。

 

 

 

私は自分が捻くれているのか、ただの文句屋なのか、時々分からなくなる時がある。

 

必要なものは必要。

違うものは違う。

 

それだけのシンプルなことが、判断できないことがよくある。

 

 

結果として新しい設備に関しては保留になった。

導入だけで800万以上かかるらしい。

 

これからも走り続ける昼夜は続ていくのだろう。