創刊の社会史 (ちくま新書)/難波 功士
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 2008年は雑誌の休刊が相次いだ年だった。ただの休刊ではなく、かつて一時代を築いた月刊プレイボーイのような軍艦雑誌の休刊であった。30年以上も続いた雑誌の休刊はさすがに読者のみならず業界全体に与えたショックは大きい。雑誌というジャンルの存在意義も含めて考え直そうと思っていた矢先に格好のテキストがちくま新書から出版された。「創刊の社会史」である。まず著者の難波氏がそれこそ雑誌の売り上げを支え続けている創刊号マニアであることが説得力があって面白いところだ。

 本書のデータで確認すると最も雑誌が創刊された85年の245点で、55年から07年までの52年間に実に2918点もの雑誌が創刊されていた。「宝島」「anan」が創刊された雑誌黄金時代60年から70年代は毎年15%以上の対前年比を出していた。だが数字だけ見ると現在低迷している雑誌の売り上げは60~70年代よりも2倍以上高い。雑誌数が少なかったけど読者に支持された黄金時代があり、その後、多品種創刊乱発時代には支持されず雑誌は読み捨てられていったとわかる。

 これまでの本業界は雑誌抜きに語れないし、今後も雑誌ありきでいくことを信じている。いつか雑誌復活する日がくるように、また2009年創刊する雑誌が20年後、30年後に同じく本屋の店頭に並んでいることを願う。