植草甚一ぼくたちの大好きなおじさん―J・J100th Anniversary Book
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 100年前の8月8日、植草甚一が生まれた。歴史上の人物がごとく植草甚一をここまで持ち上げるのには理由がある。個人的も好きであることがまず第一であるが、それ以上に、サブカルチャー史における植草さんの功績は後世に語り継がなくてはならないほど、大きい。功績というとなにか偉大のな発見をしたとか、賞をもらっているとかいうことを思い浮かべてしまう。そんな形を残さなくても、植草さんの生き方そのものが、いまの若者と必ずしも同じではなくても継承されている。そのルーツをたどってみると、おそらく何かしら植草さんに行き着くことだろう。一見、好きなことをして生きていたおじさんとしか見えないけれど、そんなことは決してなく、読書も、ジャズも、映画も一生をかけてここまで楽しんでやったひとは見たことはない。こういう人物ほど語り継がれ、いつまでも教祖として崇められていく。なぜならひとはみな好きなことして生きていきたいという願望が強いはずだし、そうはいっても、実際問題実行できないのがわれわれである。
 いまのニートやフリーターが考えている先にはこの好きなことをしたいという思いが強いと思う。それをなにかまわりやマスコミが変に騒ぎ過ぎているせいで、おかしな方向に進んでいる。植草さんを知る人にとっては、彼らは植草さんの意志を継ぐ自由人なんだなあと理解できる。植草さんのように生きることだって実は楽じゃないんだと明るくたくましく生きていってほしい。

 このたび晶文社より「ぼくたちの大好きなおじさん」が出版された。植草さんに肩入れする各界の著名人がJJへの思いを語っている。植草さんの声入りCDがたまらない。天国の植草さんに会えたようなとてもうれしい宝物になった。