軟弱者の言い分 | 書店員の話
- 新編 軟弱
者の言い分
- 小谷野 敦
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「もてない男」小谷野敦のちくま文庫新編「軟弱者の言い分」を読む。2001年に晶文社から刊行されたもので、当時、ちくま新書「もてない男」が売れ、もてない男のはずなのに結婚して若手評論家として注目を集めた小谷野氏に勢いがあった頃の作品。
- 随分前に出版された単行本、特に時事的なエッセイは文庫化に際し、加筆修正が加わるので書き下ろしのように新鮮に読めるのがいい。小説の文庫化の加筆修正はあまり賛成しないが、エッセイ、評論はおおいに歓迎。
今では離婚し、再びもてない男となり、自らを「軟弱者」とする小谷野氏の世間への厳しい申しつけはもっと軟弱者からみれば、たとえもてなかろうが、スポーツ音痴だろうがその知性は、軟弱がなせるワザではないと思う。
例えば、「趣味は何ですか」と聞かれて、何も真っ当な答えがなく無能な男であると嘆くが、歴代天皇の諡号や世界中の国名を暗記しているという特技は、もうすでに一般の凡人からみたら、ものすごいことであって、小谷野氏が軟弱者の代表選手として語られてしまったら、さらにもっと体力も知識もない軟弱者ものたちはいったいどうすればいいのか途方にくれる。小谷野氏はそういっていつも裏切るから、このあと書いた本が売れまくって強硬者であることがわかるから心配はいらない。