小説のゆくえ
筒井 康隆
 筒井康隆氏の現代文学に関するエッセイを集めた「小説のゆくえ」が文庫になった。
3年前の単行本もたぶん読んだと思うが、ほとんど覚えていないので再読。

 文学界の大御所が断筆宣言後に書いた文章が収録されている。三島由紀夫賞選評から、そこまで収録しなくてもいいという超短文の帯推薦文まで入った筒井氏の現代文学への熱いエールが感じられる。
 筒井氏は、とにかく面白くない小説にははっきりと酷評する。めったに帯や推薦文も書かない。そんな筒井氏が絶賛していたのが町田康だった。このころ町田康の「くっすん大黒」が賛否両論なかで、筒井氏のベタ
褒めは尋常じゃないなかった。この時に気づくべきでした。その後の町田康の活躍は承知のとおり。

今年で72歳の筒井氏の後継者とまではいかないが、町田康は後を継ぐ者としてふさわしい逸材。さらに筒井氏と匹敵する編集者泣かせらしい。これから筒井氏のような他の追随を許さない圧倒的な町田ワールドを作ってくれることを期待したい。