ニッポン不公正社会
斎藤 貴男, 林 信吾
書籍で読む格差社会論は年々、そのタイトルや内容がすごくなってきている。「しのびよるネオ階級社会」「機会不平等」「日本の経済格差」「不平等社会日本」「希望格差社会」「下流社会」、実際に現実問題として近づいてきている。
 本書は、負け組から生まれた人間は勝ち組にのし上がれないイギリス階級社会のような社会が到来するという「しのびよるネオ階級社会」の林信吾と教育機会均等の崩壊から始まる「機会不平等」の斉藤貴男の対談をまとめたもの。両者は、この2極化する社会にいち早く目をつけて警告を発した新進のジャーナリスト。それぞれの人生をたどりながら、より深く現実問題を検証している。
 ジャーナリズムという厳しい世界で生き残る2人はさすがに強者。社会に対するものすごい憤りに対して異議を申したいために、屁理屈でなく説得力をつけるため現場に足を運んで取材をする。現場の声を拾っているから、労力がかかる分、専門家の机の上の議論とはワケが違う。
林信吾は10年間イギリスで新聞記者をつとめ、イギリスを軸にした比較社会論はアメリカ的な競争社会を教え込まれた日本人には新鮮な議論に見える。ぷちナショナリズムや自民党の圧勝が実は日本の社会をイギリス的階級社会に接近させている。
 一方、斉藤貴男も常に権力と戦いながら、問題をきちんと指摘している。真のジャーナリズムの姿を決して妥協せずに突き進んでいるのがよくわかる。中国や北朝鮮問題にほとんど関心を示さない若者には斉藤貴男の反骨精神を学んでほしい。