ウルトラ・ダラー
手嶋 龍一

 前NHKワシントン支局長の手島龍一が北朝鮮の拉致、偽札ドルといった国家間外交トップシークレットを暴露した衝撃作。

 これが現実に起こった物語なら国家機密漏洩の罪に問われる可能性もある。ところがドキュメタリーノベルという物語の形にしたのが、その暴露話を煙に巻いているように思えてならない。ノンフィクションで書いたほうが「国家の罠」のように信憑性がでて良かったのではないかと個人的は思う。


 かつて元外交官・春江一也「プラハの春」が同じようなドキュメタリーノベルで話題になったが、北朝鮮の拉致問題が切迫しているなかでの「ウルトラダラー」の与える影響は書籍が売れるという領域を超えて外交問題にも影響を及ぼすだろう。


 ニュースや新聞で伝えられる情報がいかに表面的であるのか痛感した。時折、ニュースで聞いた外交問題が織り交ぜられてあり、飽きさせない。国家外交のトップシークレットはこういった内部にかつて深くかかわっていた人間からでしか知り得ないから、読む価値はある。