タンノイのエジンバラ
長嶋 有
 長島有の作品はなぜかいつも気になる。その文章のリズムと独特の視点が読んでいてあきがこない。芥川賞作の「猛スピードで母は」にはじまり、「泣かない女はいない」まで作品はどれも日々のささやかで平凡な暮らしのなかで起こる出来事を鮮明に描きだす。
それぞれの作品に登場する母にしろ、恋人にしろ、少女にしろ、長島有の持ち味は個性的な女性の書き方がうまい。女のおかしさを書かせたら今一番の作家だと思う。男性作家でありながら女性を主人公におく作品が多いこと、また年1冊のペースで新刊がでる遅筆ぶりがマイペースで気に入っている。

「タンノイのエジンバラ」もまさに長島有の真骨頂の短編集。登場する女性たちが実にいい。実家の
金庫を盗む三姉妹、隣の家の娘、パチンコ屋でバイトする30歳の女。いい味でている。この味わいは長島有ワールドにどっぷりはまっている私だけの感覚なんだろうか。