週刊誌風雲録
高橋 呉郎(文春新書)

雑誌の低迷が続いている。97年から始まった雑誌の落ち込みはいまだに底が見えていない。メディアの多様化で雑誌が再び復活する可能性はきわめて低いように思われる。そんないまだからこそ、かつての雑誌黄金時代に立ち返り、温故知新の精神で新しい発想を生み出したい。本書はそんな思いも込められているような気がしてならない。出版社の週刊誌創刊ラッシュが起こった昭和30年代は週刊誌こそが新しい最良の情報源であることを世間に認知させた時期だった。


著者はその雑誌黄金時代に、ライターとして多くの特ダネを書いていた梶山季之、草柳大蔵の下でともに編集に携わった高橋呉郎氏。速筆、多筆で知られた梶山はその当時、梶山部隊といわれ、表紙の挿絵以外はほとんどの記事を書いていたこともあった。



それまで週刊誌といえば新聞社系の独壇場だった。「週刊朝日」「サンデー毎日」の2大週刊誌は吉川英治の「新平家物語」など人気連載小説をもち圧倒的なシェアを保っていた。昭和31年に新潮社が、33年には文芸春秋が週刊誌市場に参入を果たす。週刊新潮は得意の文芸路線で「眠狂四郎無頼控」の剣豪シリーズをヒットさせ、週刊文春は皇太子ご成婚を控えての創刊でミッチーブームを起こし、部数を伸ばした。その後、週刊現代、週刊ポスト、女性自身も創刊になった。


 現在、その30年代生まれの週刊誌たちがたてなみ売り部数を落としている。ネットの普及で一番の打撃を受けているのが週刊誌だという仮説を信じるならば、50年以上の歴史をもつ週刊誌の存在自体が今後危ないかもしれない。