北の玄関を開け、南の窓を開けると
強い風が部屋を吹き抜けていく。
6月。
梅雨入りを早めた台風は休日の部屋の空気を
全部入れ替えてくれる。
4月、5月、特別大きな負荷はなかったけれど、
気持ちの糸を緩める時間はなくて
いつも「ちょっと先」を考え続けていなければ
その先が崩れていくような
そんな日々。
気がつけば、この春からプライベートな会話なんて
誰ともしていなかった。
でも、すべきことがあるって、
実は幸せなことなのよね。
やることのない時間に放り出されたら
きっと
わたしは自分の思考に引きずられて
勝手に落ちていってしまう。
一息ついた今日が、こんな天気でよかった。
髪が風に吹き乱されて
ぐしゃぐしゃになっても構わない。
わたしの心も強い風に吹かれて
たまった埃を吹き飛ばしてしまおう。
今、日本のどこかであの人を吹き抜けた風も
台風の中心へと向かっているはず。
もしかしたら私の心から剥がれた欠片と
海の上で出会うかも。