夜の公園で座っていたら、足元に死にかけの蝉がいました。
飛ぶ力はとうになく、ずるずると力なく這いずっていました。
ああ、こいつは今死ぬところなんだな、と憐みつつ眺めていたらやにわに、それにはなんとも不似合いに、みんみんと力強く鳴き出しました。

見渡すと周りには似たような、力尽きた蝉共が何匹も、同じように鳴いていました。
ああ、蝉ってこうやって夜中に地面で鳴きながら死んでいくんだと気が付きました。

蝉は夏の終わりに、鳴き疲れて落ちて静かに死ぬんだと思っていました。
実際には落ちても死ぬまで鳴き続けるのだと気が付くと、その壮絶な死にざまに敬意を覚えざるを得ませんでした。

自分はこんなふうに、馬鹿みたいにひとつのことを死ぬ間際までやり続けてやれるだろうか。
馬鹿ってカッコイイな。