宝くじを買いました。当たらなければ生活が破たんします。
宝くじの当たる確率が天文学的なことは理解しています。ただ、生活を立て直すもっとましな方法がもう思いつかないのです。
あれこれやりつくした結果、宝くじが一番ましなくらい自分には可能性が残っていないんだと思い知らされた結果なのです。

割りと普通な会社に入って、前より実入りは減ったけど、人並みに暮らすくらいはできるだろうと思ってました。
同僚の収入は幾らなんでも自分とそんなに変わらないだろうし、その人たちが普通に暮らしているんだから、きっとこれが世間並なんだろうと思ってました。
でもなぜか、毎月収入より数十万も多くのお金が出ていきます。
前の会社でも十分なお金をもらっていたわけではないのですが、支払日の関係でちょっとしたボーナスくらいの預金があったはずなのに、あっという間に底をついて、銀行預金額はマイナスになりました。
こぞうが私立の中学校に入ったばかりだから仕方ないのかな、なんて思っていたらあっという間にマイナスが限界に近づきました
まともな会社員というのはなんだか信用があるもので、カードローンの申請をしたらさくっと口座が開けてしまいました
それで安心したらまだまだどんどんお金が流れ出していって、あっという間に大台を突破してしまいました。

子供のころから裕福な生活をしたことはありません。20代の頃は掛け値なしに貧乏でした。40前後に大きな会社で働いていたころ少しゆとりがありましたが、基本裕福だったことはありません。
それでも今ほど気ちがいじみて苦しいと思ったことはありませんでした。
所持金が0に近づいて、使えるお金がなくなるのは苦しかったですが、自分がコントロールできないところでぐんぐん音を立てて借金が増えていくのは本当に恐ろしいです。

最初から収入が減るのは見えてましたが、ポジティブだったのはいろいろとやれることがあると思っていたからです。
前の会社のつながりでバイトできるんじゃないか、なんて考えていたこともありました。
勿論、世間はそんなに甘くありませんでした。
転職して2か月でちょっとしたアプリを作って、これ売りませんか?って見せたんですが、それっきり連絡がありません。
良く考えたら上場企業が一介のエンジニアと対等に付き合うわけないんですよね。

仕方ないのでGoogle Playにアプリを上げておけばお小遣い程度にはなるんじゃないかと思ったこともありました。
有料でアップロードしたアプリは未だにダウンロード件数0です。

フリーの友達と協力して仕事を取ろうとしました。幾つか打ち合わせするところまで行ったのですが、今のところ殆ど手を動かさない小さな仕事を1つもらっただけです。
今の会社の社則にバイト禁止とは書いていないのですが、リスクを冒してまでやるような仕事ではありませんでした。

ネットに転がってる小さな仕事をあっせんするサイトに登録してみましたが、どう見てもまともな人間が手を付ける金額じゃないので放置しています。
本当に世間ではあんな子供の小遣いにもならないような金額で仕事を請けるプログラマーがいるのだとしたら、もうプログラマーはまっとうな大人の仕事ではありません。
20代の頃は将来は何百万人もプログラマーが不足するなんて言われてたこともあったのですが、笑い話です。

年末になってエージェントからヘッドハントぽい連絡が何件か来ましたが、レジュメを送ったら返事がきません。少し夢をみたのは事実ですが、また現実を再認識させられました。50過ぎたソフトウェアエンジニアに価値なんてないんです。
今の会社だって友人の引きが無ければレジュメを見てもくれなかったでしょう。
転職できるとしたら、知り合いからの誘いしかないんです。
そして、私はもうそんな知り合いを持っていません。

こぞうを私立の中学校にやったのが身の程知らずだったんでしょうか?
さんざ苦労して、無試験で中学校に入れるレベルの英語を身に付けさせました。公立の中学校に入れて鎖落ちるのを見るのは耐えられませんでした。
ここに至るまでに結構な投資はしましたが、それを後悔はしていません。
今の学校も楽しそうに通っています。
彼の生活はどうしても守ってあげたいと思っているのです。

ひめの生活ももちろん守ってあげたいと思っています。でも、もう限界なんです。
この会社に入る前に、ひめに渡していたお小遣いを止めさせてもらいました。
結婚する前から10年続けていた習慣を止めるのは本当に苦しかったのですが、そうしないと生活に必要な資金を用意する計算が成り立たなかったのです。
ひめは少し不満な顔をして、急に言われるのは困るなぁと言いましたが、それ以上の恨み言は言いませんでした。
私には、急に言ったつもりはありませんでした。実際、早期退職した時から無理な出費だったのです。
もう無理だよ、無理だよと3年言い続けた、最後の決断をしただけなんです。

貯金なんてもちろんありません。
早期退職の時にもらった割増退職金は一年で使い切りました。
義父から譲り受けた株券は家を買う時に売り払いました。
私に残っている最後の財産はローン半ばの家だけです。
カードローンの上限いっぱいまで借りてしまったとしても、家を売り払えばさすがにとんとんくらいにはなるでしょう。
でも、これが本当に最後です。
家ではボーダーコリーを飼っています。今年で9歳になります。大型犬の寿命は10年程度と言われていますから、もう老犬の域に達しています。
せめてこいつが旅立つまでは家を手放したくなかったのですが、背に腹は代えられないでしょう。

今年の年末、宝くじが当たっていなかったら、次の決断をしなければなりません。
無制限に使わせている家族カードを食費以外に使うのはやめてください。キッザニアや幕張へたびたび遊びに行くのは止められませんが、お金は自分のバイト代から出してください。
それでも最後の最後まで、家族の生活費は僕が出します。あなたの働いたお金を出してほしいとは言わないつもりです。それが僕の最後の意地です。
それでも借金を返済する方向に持っていくのは多分無理です。
鋭く切られた傷口から流れ出る血のような借金を止めるのが精いっぱいです。
そこからどうしたらいいか、今はなにも考えられません。