2022年11月16日「インボイス問題検討・超党派議員連盟」公開ヒアリングにて、エンタメ4団体を代表した甲斐田裕子さんスピーチ
スピーチ全文も、動画概要欄にあります。
以下 大事なので全文引用します。
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インボイス問題検討・超党派議員連盟公開ヒアリング 甲斐田裕子氏スピーチ(2022年11月16日)
甲斐田裕子さん: みなさん本日はよろしくお願いいたします。
国会関係者の皆様、そして省庁関係者の皆様、このような機会をいただきましてありがとうございます。 私達はインボイス制度を憂慮するクリエーターが、それぞれの業界の有志で立ち上 げたチームです。4 団体の代表が本日来ていますので、紹介させてください。
「アニメ業界の未来を考える会」大塚雅彦さん
「インボイス制度を考える演劇人の会」丸尾聡さん
「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」由高れおんさん
私は、インボイス制度を憂慮する声優の有志チーム VOICTION の共同代表、甲斐 田裕子です。
本日は私が代表してお話しさせていただきます。
私達クリエーターの多くは、日々の生活や作品に向き合うのに精一杯で、なかなか 政治の動きを知ることができません。インボイス制度を知らない当事者があまりに も多く、このままでは、いずれ大混乱が起き、多くの人の生活が立ち行かなくなる ことを危惧し、制度の周知と、問題提起ために私達は立ち上がりました。普段は一 人一人が誇りを持って、自分の個性で勝負をしている個人事業主ですが、お互いに 手を取り合い連携していかなければ、この社会を一変させる制度に立ち向かえない と、危機を感じたからです。
私達は賛同者を集め、それぞれの業界で実態調査を行 いました。2 ヶ月余りで収集したアンケート結果では、文化事業に携わる 4 団体 全てで、同じような結果が出ました。半数以上が年収300 万以下、2 割の人が廃 業を検討しています。 フリーランスや小規模事業者の廃業や倒産が増えれば、彼らと一緒に作品を作って いる中小企業も事業が立ち行かなくなり、業界そのものの縮小、クオリティの低下 は免れません。インボイス制度による増収見込みを遥かに超える減収となるのが目 に見えています。
目の前の 2500億という税収増のために、将来の税収減は視野に入れないと、財務省は考えているのでしょうか?
国にとって大事なものは税収ではなく、この国に生きる一人ひとりであり、その人 びとが生み出す文化や付加価値だと思います。その文化や付加価値を生み出している事業者の多くは、消費税法で納税が免除された免税事業者です。
そもそも、フリーランスの 9 割が年収 1000 万円以下の免税事業者だという実態調査も存在し ます。
この法律が成立した2016 年には考えられなかった、新型コロナウィルスとの闘い が3年近く続いています。エンタメ業界はコロナ禍の初めから、ライブハウスや劇場の封鎖、公演中止や延期による大ダメージ、持続化補助金手続きの永遠に繰り返 される差し戻しなどにより、何度も何度も何度も大打撃を受け続け、業界存続の危機にあります。さらには、この物価高騰。そこに追い打ちをかけるように、インボ イス制度を。来年10 月から本当に導入されるのですか?
国会ではいつも「法律で決まっているから円滑に進める」との、答えにならない答 弁が繰り返されています。所得税法等の一部を改正する法律第 171 条 2 には「インボイス制度導入による影響を検証し、必要ならば措置を講じる」とあります。 2016 年に導入が決まってから 6 年の間、特に免税事業者や、彼らと取引のある 業界についての調査や声を、財務省・国税庁はまとめているのでしょうか? インボイス制度導入の根拠として「複数税率のもとで適正な課税を行うために必要 なもの」と何度も何度も答弁されていますが、消費税を、一律減税すれば、複数税率は無くなり、導入根拠は霧散します。財務省から立法府に、消費税減税やインボ イス制度廃止を提案されないのですか?
軽減税率の対象は「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読 契約が締結された 週 2 回以上発行される新聞」のみです。これらを扱う業種は限られています。さらにその中で、複数税率を原因とする不適正は、果たして多いのか疑問です。 2022 年 2 月 17 日の衆議院予算委員会の答弁で、複数税率を原因とする税額控 除の不正の件数を、調査していなかったと答えています。また同年 8 月 8 日、インボイス制度に関する申し入れおよび質疑応答の場でも、調査していないと答弁し ています。さらに3ヶ月経った本日 、11 月 16 日現在で、調査は実施されたのでしょうか?
「適正な課税」のために、日本が誇るあらゆる文化、芸術、伝統が衰退し、危機に瀕することが明らかです。一度潰えた文化や技術は元には戻りません。
たとえばアニメ業界なら、アニメスタジオとアニメーターは本来、アニメ作品を共に生み出す 「仕事仲間」です。マンガ業界なら、漫画家とアシスタントが、演劇業界なら劇団 と俳優が、声優業界なら所属事務所と声優が取引関係にあり、仕事仲間です。しかし、インボイス制度の導入によって仲間同士が消費税を押し付け合うこととなり、 関係性は硬直。力関係の弱いほうが新たに消費税の負担を負うことになります。 免税事業者から課税事業者に新たに転換した場合、その納税額は、年収 300 万円 のアニメーターで年間 13.6 万円という試算がでています。アニメ業界の調査では、8 割以上が制度を認知し、9 割がインボイス制度に反対しています。
インボイス制度は、免税という権利を自ら放棄させる制度ではないでしょうか? そんな中で現在、多くのクリエーターの元に「課税事業者になるように」「課税事 業者にならなければ値引きします」といった独禁法違反スレスレの、一方的な通知 が横行しています。
施行まであと 1 年と迫り、ようやくインボイス制度の問題が当事者の間で顕在化してきました。 「問題が起きてから対処すれば良い」「公正取引委員会で対処すれば良い」と言い ますが、公正取引委員会は、あくまで事後対応が中心であり、介入したとて、一度 ヒビの入った事業者同士の信頼関係を修復することまではできません。取引先を 失った後の仕事を補償してくれるわけでもありません。とても周知が追いついているとは言えない現状で、このまま インボイス制度が導入されてしまえば、泣き寝 入り事案が多発することは容易に想像できます。 たとえ権利を放棄せず、免税を選択したとしても、値下げの懸念は残り、「免税事業者だから」と断られるのではなく「たまたま合う仕事がなかった」と言われてしまったら、違反を立証することは不可能です。公正取引委員会に通報もできず、気 付かぬうちに淘汰されてしまうのです。実力や才能ではなく、税制によって仕事が 奪われるような制度を、本当に導入するのですか?
また、課税事業者になり「消費税を価格に転嫁すればいい」との声もありますが、 よしんば価格に転嫁できたとしたら、それはクライアントにとっては仕入れ値の上昇です。そうなれば当然、採算を合わせるために商品価格を上げることも、大きな 選択肢の一つとなります。サブスクの料金が、DVD が、漫画が、小説が、個人事 業主や小規模事業者が生産や卸などに関わっている、ありとあらゆる製品が値上げ することにもつながります。
今この時に、値上げに直接つながる税制度の改変は必要でしょうか? さらに、必死になって立ち上がった個人事業主たちに「益税だ」「預り金なんだから納めればいいだけ」「脱税だ」などと言われのない言葉が浴びせられています。 「益税」も「預り金」も消費税法には書かれていない、実態の無い言葉です。
消費税は、国にとっての安定財源というだけで、国民にとっては景気不景気関係なく取り立てられる重税です。だからこそ、このコロナ禍で国民が疲弊する中、最高税収を記録したのではありませんか? そして社会保障・福祉のための税金だと繰り返されますが、それは無い人から取って無い人へ回すことですか?
インボイス制度が始まって納税すると、生活が立ち行 かなくなる人が2 割以上いるのです。「税を納めたら生きていけない」というの は、本末転倒では無いですか?
コロナの第 8 波が始まっていますが、病床削減推 進法の財源は消費税だと過去に大臣が答弁しています。病床を減らすのは社会保障 なのですか?
先日 11/11 の内閣委員会において、和田内閣副大臣はこう答弁されました「アニメ・漫画・ ゲームは広く海外の人に親しまれており、特に近年はデジタルによる 海外展開も積極的に行われるなど、日本を代表するコンテンツとして、クールジャ パンにおいて果たしてい 役割は極めて大きい、大変期待される成長産業だと考え ております。また作品をきっかけとして、日本の文化に興味を持ったり、インバウンドにつながるなど、波及効果も大変大きいことから、アニメ等と他分野との連携 を図りながらクールジャパン全体の盛り上げにつなげてまいりたいと思います」 と。 成長産業だと期待される、クールジャパンを支える業界の裾野を、インボイス制度 はごっそり削ってしまうのです。
裾野が削れれば、山は低くなり、海外に負け、日 本の文化の未来は断ち消えてしまいます。作品の低下はじわじわやってきます。一 度失われた文化は戻りません。10 年後も 20 年後も、100 年後も良い作品を作 り続けられるよう、裾野を削らないでください。
複雑で生産性のない事務負担の増 加で、自分を磨く時間や、作品制作の時間を削らないでください。 「決まったことだから」と目をつぶらず、未来の成長と発展を見据え、国民のために、未来の才能たちのために、「公平、 中立、簡素」の基本に立ち返って、一律減税や、インボイス制度廃止を、財務省より立法府に提案してくださることを願います。
■オンライン署名 《STOPインボイス!》弱いものから搾取し、多様な働き方とカルチャーを衰退させるインボイス制度を廃止してください! https://bit.ly/3FopI9Y
■ご支援お願いいたします(寄付のお願い) https://t.co/MpIl8rZrOr
■STOP! インボイス https://youtu.be/68NWoJmhIHg