「ちょっと…整理…させて?ここって、ホテル…じゃねぇよなぁ…」

「う~ん、そだね。下のほうの階はショップ。中階には色んなオフィスが入ってるっぽいよ」

詳細はあまりよく知らないふりをしながら、潤は平然と先を歩く。セキュリティロックの掛かった自動ドアをいくつか通過し、館内通路を進んでいく。俺は状況がさっぱり飲み込めず、キョロキョロと挙動不審になりながら、潤の背中を追った。

…と、そこに。
『関係者専用エレベーター』という館内表示が眼前に飛び込んできた。

「関係者!??って、おまっ……まさかっ…」

「あ、これ。30階まではノンストップだよ」

"んなこと聞いてんじゃねぇんだよ!!"
と、オーソドックスなツッコミを入れたくなった。

ニヤッと悪戯な笑みを浮かべ、乗り込んだエレベーターで"46"のボタンを押した。
最上階のひとつ下だった。

「想像はつくと思うけど。夜景、なかなかの眺めだよ♪」

こういうとき、咄嗟に気の利いた返しができる大人になりたいもんだ…、と唇を噛みしめる。口を突いて出たのは、色気も余裕もない、ごくごく素朴な疑問だけだった。

「か、買っちまったの……か……!?」

「えっ?そんなに驚くこと!??」

逆に訊き返された。

「いや、そりゃ…まぁ…。えっ、でも、つい数日前までいつもの、ほら、あの家で…」

「ふっ……、ん、あははははっ!!!!!
ちょっとぉ、なに?そのシドロモドロ感!!らしくないなっ」

さっきまでの紳士な態度から一転、潤は俺の反応をみて腹を抱えて無邪気に笑いだした。


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