腕時計の針は午後10時すぎを指していた。
最悪、日付を跨ぐ可能性も想定はしていたが、思ったよりスムーズに仕事を終えられた。
真っ先にスマホを取り出す。
今朝以降、特になんの連絡も来ていない。
[終わったよ]
送信と同時に表示が"既読"に変わった。
潤の心情を推し量り、心臓がドクンッと荒波を立てた。
その直後、文をあらかじめ打ち込んであったのか??というぐらいの即レスが来た。
[お疲れさま。こっちも準備万端!お待ちしてますよ]
ふぅ~、よかった…
短いながらも その1文には、長らく待ちぼうけを食らった苛立ちなど微塵も感じられなかった。むしろ、リミットまでに俺の受入体制を整えられた達成感や、無駄に気をつかわせないような配慮が窺えた。
[待ってるって…。今どこ?店?おまえんち?]
[マネに伝えてあるよ]
ふぅん?
2度目の返信には、わずかな間があいた。
"了解"のスタンプを送り、その場のLINEは終わりにした。
潤には潤の、プランがあるんだろう。
黙って従うことにした。
車中、頭の中を空っぽにして、これから過ごす潤との時間に想いを馳せた。
車窓からボーッと外を眺めていると、なんだか見慣れない景色が流れていき、自宅とは真逆の方角に車を走らせていることに気づいた。
「なぁ、この道って…」
「あ、ご心配なく!松本さんからご指定いただいた場所まで、あと20分ほどです」
マネは俺の質問を途中で遮り、それ以上なにも言葉を発することはなかった。
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