穏やかに過ごせるのが一番。
それは間違いないとは思うけど。

時に 相手の心を揺さぶって、食い付いて離さない、強情さや傲慢さ、執着心。
そんな刺激的要素が、俺たち2人にはゴッソリ抜け落ちている気がした。

そういう意味では、今夜の智くんはかなり刺激的だった。
別に平謝りするようなことは何もしてない。想像していなかった豹変ぶりに、ちょっと面食らって 身構えてしまっただけだ。

これ以上、逃げてばかりの自分はイヤだった。

「智くん?こっち、見て」

「…」

「ねぇっ!?ちゃんと、俺のほう見てよ!!」

語気を強めた俺に、智くんの肩がビクッと跳ねた。

バツが悪そうに顔を上げた智くんに対して、今度は俺の方から、そっと口づけを落とした。
智くんの強張った表情が、いくぶん緩和したように見えた。

俺は目を細めて、ゆっくりと、偽りのない気持ちを言葉に乗せた。

「今さらだけど。

俺、智くんが好きだよ。誰よりも好き。

だから…
智くんの気持ちを知りたい。考えてること、感じてること、ぜんぶ」

智くんの丸い瞳をじっと見据えた。
彼が、あまりジロジロと見られるのを好まないことは承知の上で。
そういう俺だって、…っていうか
シリアスに見つめあう場面が『得意』な奴なんてどこにいんだよ!?と、自分に突っ込みながら、強い気持ちを奮い立たせた。

「智くん、教えて。俺の、何が不満?何が不安?」

「……??
不満…なんてないよ。翔くんは何も悪くない」

「じゃあ、なんで そんなにつらそうな顔すんだよ。見てると、こっちも胸が締め付けられそうで…」

「だよね…ごめん」

「じゃなくてっ!!!!!

あ、いや、そのっ…。あぁぁっ!もうっ!俺も…ごめん!!だからぁ、違うんだよぉ」

相手の気持ちどころか、自分の気持ちすら、まともに言葉で説明できない歯痒さに、下唇を噛んだ。

智くんがボソッとこぼした。

「俺は…
翔くんみたいに、デキた人間じゃない…から」

やはり智くんは耐えきれず、俺の視線を外して俯いてしまった。


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