[駅に着いたよ。改札の前で待ってるから、一刻も早く帰ってきて。ちゃんと話をしよう、カズ!]
とは言っても…
あと1時間もすれば、通勤の帰宅ラッシュが始まってしまう。この駅も平日はそれなりに利用客が多いから、カズが電車から降りた直後に人混みに紛れて見失ってしまう可能性も高い。
懸念を挙げればキリがなかった。
ひたすら祈るしかなかった。
何かひとつでも、カズの動向を知る手がかりを得られれば、手の打ちようもあるのに。
家にいようが、改札で待ち伏せしようが、状況は大して変わらない。それでも、家でひとりボーッとしているのはイヤだった。
ふぅっ…と大きく息を吐いて、改札の内側に目を凝らした。
まさに、その瞬間だった。
"い……た…っ!"
ホームから改札へ続く階段を、ゆっくりと降りてくる姿を捉えた。
間違いないよな?幻影じゃねぇよな?
おいっ、マジか!?
こんなドンピシャすぎるタイミングって…
「カズ!!!!!」
IC定期券をタッチして改札を通り抜け、勢いよくカズのもとへ駆け寄った。
カズも俺に気づいて目が合うと、一瞬顔を伏せてバツが悪そうに視線を逸らした。
改札に続く通路の真ん中で、俺は人目も憚らず、カズを力まかせに抱き締めた。
「…ってぇよ、ショウちゃん。ちょっ…、もう、落ち着いて…。離し…て…」
「イヤだよ、絶対に離さねぇ。勝手に出ていったお仕置きだ。ったく、返事も全然よこさねぇしさ…」
両腕にぐっと力を込めた。
カズはなぜか、肩を震わせていた。
「やめて!!」
その声は、照れ隠しではなく
本気の拒絶だった。
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