はぁ、はぁ、はぁっ…。

タクシーを降りてから、しばらく全速力で走った。

閑静な住宅街。
細い路地が入り組んでいて、車ではなかなかマンションの前までは行けない。
走ったほうが断然速い。
人の気配もほぼ感じられない。
周囲の目を気にする必要は、ほとんど無さそうだ。
芸能人にとっては、なかなかの
好ロケーションだよ、相葉さんっ。


ダメ元で、LINEしてみる。

[相葉さん!着いた。マンションの下]

やはり、既読マークさえ、つかない。
電話もあきらめた。

エントランスから、部屋番号を呼び出す。
俺の顔が、見えているはずだ。
俺は、あえて。
「済まなさそうな表情」ではなく、
能天気な「おちゃらけ・潤」を選択して
顔の横でヒラヒラと手を振った。

応答なし。


すかさず2回目の呼び出し。

口もとだけは笑ってみせて。
でも目はまっすぐに、真剣な眼差しを送った。
モニター越しに、相葉さんと見つめあっている。
俺は、そう信じて疑わなかった。


3回目。

"開けてくれるまで、絶対帰らない"

そんな強い視線を、迷わずに送り続けた。

数秒後。ロックが無言で解除された。
俺は、モニターに向かって合掌のポーズをとり、軽く頭を下げて。

相葉さんの部屋まで急いだ。

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