部屋に足を踏み入れると。
書類や新聞、雑誌の山がいくつもあって。無理矢理に部屋の隅っこに追いやられている様子が一目瞭然だった。

「潤、メシ食った?」

「いや…まだ」

素っ気なく返した。

「なぁ、潤」

「ん?」

「さっきは…悪かった…な」

「え?」

翔さん…。
その顔、ずるい。

さっきまでの荒々しさがまるで嘘のように。
両眉は垂れ下がって、申し訳なさそうに俺を見る。
その瞳は、とても温かく穏やかな色をしていた。

「潤。やっと、俺のこと、まともに見てくれたな」

ニコッと優しく、包み込むように微笑む。

翔さん…
それ、反則だから。

俺もつられて、笑おうと…した。
でもまだ、わだかまりは消えなくて。
なんとも微妙な冴えない表情で、左の口角が少し上がっただけだった。

まっすぐに俺を見つめる翔さんの視線が、物語っている。

ーー俺に、やましいことなんて、なにひとつない、
と。

分かってる。信じてる。何かを疑ってた訳じゃない。

ただ。

風磨に嫉妬しただけ。
聞きたくもないエピソードを聞かされて、ムッとしただけ。

ただ、それと。

淋しかっただけ、だよ。

あんたは。
俺だけを、ずっと見ていてはくれないから。

翔さんの視線を受け止めて。
俺の視線から、翔さんが俺の気持ちを察して。
しばらく2人はその場から動けずにいた。

翔さん。聞かせてほしい。
俺の気持ちが届いているなら。

翔さんは?俺の、なに…??



静寂を破る、翔さんの声。
俺の心の声が、伝わった…?

「なぁ、潤。
わがままで、わりぃ…。

けど。俺は。
俺のスタンスを守りたい。

こんな俺に愛想を尽かしたんなら。
俺は、潤を引き止める資格は、ない」

……。

「でも。
もし。こんな俺でも許してくれるなら。
おまえが受け入れてくれるなら。

いつでも一番近くで、おまえに見ていてほしい、って。
俺は、今でもそう思ってるよ」


翔…さん…。

あんたさ、本当に、ずるいね。

そんな言い方…。
俺が、絶対にノーとは言えない言葉を選んでる。

俺の想い、知ってるくせに。
意地悪だね。

まだ、翔さんの口から、一度も聞かせてもらったこと、ないよ。

おまえが好きだ、って…。

「翔さん…

俺を、抱いて?」

俺は今日も。

そうやってカラダを求めることしか、できなかった。

==========
このお話は、ここで終わります。
2人の続きはいつかまた。
別のお話で…。