何年かぶりの、超・大型台風。
今晩、深夜に関東地方に直撃だって、さっき楽屋のテレビで言ってた。

早く帰らねぇと。
風も雨足もどんどん強くなるばかり。

今日はメンバー全員がバラバラの現場。みんな、無事に帰れたのかな。
…って。一番心配されてんのは、たぶん俺か。
さすがにこの時間まで仕事してんのは俺ぐらい、だろ。

「お疲れさまでした」

「ん、ありがとう。運転気をつけて」

マネを見送って、いつもどおりの帰宅。

のはずが……



…なっっ。
思わず息を呑み込む。

だ、だ、誰だっ………?

全身黒づくめ。玄関のドアにもたれかかって、うずくまる人影。

そいつは俺の気配に気付き、フッと顔をあげる。

「おっせぇよ…翔さん」



潤だった。

「おまっ、いったい…」

なにしてんだよ?
いつから、そこにいた??
てか、なんでこんな大雨の中???

疑問だらけで頭がパニクった。

「ふふん…♪
俺を誰だと思ってんのぉ?変装も、マンション侵入なんかも、お手のものっしょ」

んなコト聞いてねぇ!

「翔さんとこ、角部屋だから隠れやすいかなって」

「全っ然、隠れてねぇって!
びっっしょ濡れじゃねーか!!?」

「急に、横なぐりの雨になってきたからさぁ。通路の屋根、全然意味ないよね」

つーか、んなこと聞いてねぇって!

「もーいいから、とにかく入れ!はやくっ」

ズブズブ、ボトボトの潤を抱えあげ、鍵をガチャガチャ強引に開けて、玄関に放り込んだ。

「いってぇなぁ。もうちょい優しく扱ってくれよー?」

ニヤニヤしながら潤が訴える。

「知るか!全部脱げ。さっさとシャワー浴びてこいっ」

「はぁ~い」

給湯温度を2度上げてやった。

脱衣所で、鼻唄まじりに潤が呟く。

「こぅでもしないと。翔さん、俺のこと、家にあげたりしてくれないでしょ?」

「人聞きの悪いこと、言うな!」

ほんっと、無茶苦茶なヤツだ。

「浴槽にお湯溜めてもいいからな」

「ふふふ。ツンデレだね、翔さんは」

生意気な口調で、愉しげに笑う。




それから、10分。20分。…

シャワーの音が止まない。

おい、いつまで入ってんだ?

30分を過ぎて、さすがに心配になり、浴室のドアをノックする。

「おい、潤」

??

返事がない。

「潤、開けるぞ」

………っっっ!?

潤っ!!?

浴槽にもたれかかって、潤が。




目を閉じて倒れていた。

「おいっ、潤!?だ、大丈夫か!!潤っっっ!?」

悲鳴にも似た俺の声が浴室に響く。

「…しょー…さん」

「潤っ」

「…大…丈夫。ちょ…と、目眩が…した…だけ」

「ちょっ、おまえ、熱あるのかっ??」

「ごめ……。なんか…暑い…ようで…寒い」

シャワーが当たっていないほうの肩が、風呂にいるとは思えないほど冷えきっていた。

俺は服のまま、潤を思いっきり抱き寄せた。

「へへ…らっきー…おれ…
はだかで…だかれて…る」

目を伏せたまま、口を歪めて潤が笑う。

「ばかっ。2度とこんな真似すんじゃねぇ」

「…ん……やくそくは…

できない…かな」

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