第1 設問2
1 A社は乙に対し本件不動産を売却し、本件不動産の所有権を失っているから、「損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」(法人税法(以下「法法」という。)22条3項3号)として損金に算入すべきとも思える。
2(1)もっとも、乙は代表取締役である甲の子であることから、「別段の定め」(法法22条3項柱書)である法法36条が適用され、損金に算入されないのではないか。
(2)法法36条は、役員と特殊な関係のある使用人に対する給与については役員に対する給与と実質的に同一視できることから、法法34条2項と同様に不相当に高額な部分は損金に算入しないとする趣旨であると考える。
(2)甲はA社の代表取締役であるから役員であり、乙は甲の子だから「役員の親族」(法人税法施行令72条1号)にあたる。したがって、乙は「特殊の関係のある使用人」(法法36条)といえる。
(3)「不相当に高額な部分」(法法36条)であるかどうかは、法人税法施行令72条の2に従い判断する。
乙の職務内容は、経理事務であり、給与は月額30万円であったことから、短期間で大きな収益をもたらすような職務ではない。乙の従事期間はわずか3年であったこと、A社の退職金規程によると3年間の勤務で受け取る退職金は微々たる金額であったことを考え合わせると、3000万円もの価値のある不動産を給付されるほどA社に貢献したとはいえない。
したがって、A社退職金規程により給付される金額を超える部分は「不相当に高額な部分」にあたる。
(4)以上より、3000万円からA社退職金規程により給付される金額を差し引いた部分は「不相当に高額な部分」として、損金に算入されない。
第2 設問3
1 暴風雪により発生した本件建物の被害について、雑損控除(所得税法(以下「所法」という。)72条1項)により、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額である330万円から控除されないか。
2 本件不動産は、たしかに著名なリゾート地にあるが、乙が賃料収入を得るための不動産であるから保養目的とはいえず、「主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するもの」(所法施行令178条1項2号)にあたらない。したがって、「第62条第1項・・・に規定する資産」(所法72条1項本文ひとつめのかっこ書き)にあたらない。よって、「居住者・・・の有する財産」にあたる。
3 本件建物の被害は、C町で記録的な暴風雪が発生し、その結果、本件建物の屋根が損傷したものであるから、「雪害」(所法施行令9条)にあたるから、「災害」(所法2条1項27号)にあたる。したがって、「災害」(所法72条1項本文)といえる。
4 「損失の金額」は、本件損害が発生した直前の本件建物の時価である800万円を基礎として計算され(所法施行令206条3項)、被害割合が5%であることから被害額40万円となる。本件建物の被害に直接関連してなされた支出はないから、「災害関連支出の金額」が5万円以下といえ、所法72条1項1号が適用される。すると、「損失の金額」である40万円が、「その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の十分の一」(所法72条1項1号)に相当する33万円を超えることになる。したがって、「超える分」である7万円が、「その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額」である330万円から控除される。
第3 設問4
1 所得税法上の取り扱い
所得税法上は、損失は、必要経費に算入される場合は総収入金額から控除される(27条2項)。必要経費に算入される場合は、債権の貸倒損失(所法51条2項)、災害等の損失(同3項)等に限られる。
2 一方、法人税法上は、損失は、別段の定めがあるものを除き、原則として損失に算入され(法法22条3項3号)、益金から控除される(法法22条1項)。
3 このような差異が生じる理由は、個人の活動は様々であるから必要経費に算入されるべき場合を限定すべきであるのに対し、法人の活動は事業活動に限られることから原則として損金に算入すべきだからであると考える。
第4 設問1
1 乙への不動産譲渡は「有償・・・による資産の譲渡」であるから、収益の額が、益金に算入される(法法22条2項)。
2 「収益の額」は、「別段の定め」である法法22条の2第4項により、引渡し時の価額となるから、引渡し時である平成29年3月31日の価格である4000万円となる。
3 以上より、4000万円が益金となる。
感想等
分量は約3枚です。
初めての司法試験、初めての科目でいきなり面食らいました。
設問1・2が法人税法、設問4も法人税法がらみとは。
租税法は所得税法メインで、法人税法は所得税法に関係ある部分しか出ないって聞いてたんだけど?
所得税法の典型論点である「事業所得の意義」とか「退職所得の意義」を書く練習ばかりしていた私っていったい・・・
全くわからない設問1を飛ばして設問2に取りかかりました。参照条文をなるべく使うよう頑張りました。
設問3は過去問で出ていたので、何を書いたらいいかわからないということはありませんでした。もっとも参照条文は初見でした。問題文には「説明しなさい」と書いてあったので一生懸命、条文に事実をあてはめました。
設問4は作文です。
設問1は、第2問を解いてから最後に取りかかりましたが、結局これだけしか書けませんでした。
今後もこんな傾向が続くなら、租税法なんて選択するもんか!(泣)