第1 設問1
1 まず、Dは本件議題及び議案を適法に請求することができたか検討する。
(1)Dが議題を請求した根拠は、会社法(以下略す)303条1項である。以下、各要件を検討する。
(2)甲社は公開会社であるから、取締役会設置会社である(327条1項1号)。すると、総株主の議決権の百分の一以上を有することが要件となる(303条2項前段)。
本件では、甲社は100株をもって1単元とする旨を定款で定めており、発行済株式総数は100万株であるから、1万個の議決権がある。また、議決権を有しない株主は存在しない。そうすると、総株主の議決権の百分の一は100個の議決権であり、Dは1万株を有することから100個の議決権を持ち、要件を満たしている。
(3)Dは平成24年から継続して株式を有しており「6か月前から引き続き有する株主」にあたる。
(4)Dは、平成29年6月29日の株主総会の八週間以上前である平成29年4月10日に請求しており、「八週間前までに」(303条2項後段)請求をしたといえる。
(5)一方、提出する議案は、法令又は定款に違反することができない(304条ただし書)。本件では、甲社の定款では、監査等委員である取締役の員数は3名以上5名以内とすることが定められている。現在の監査等委員である取締役の数は、A、B、Cの3名であるから4人目であるFを選任する議案は定款に違反しない。
また、Dは新たに提案しているから「実質的に同一の議案」ともいえない。
(6)以上より、Dは適法に議題及び議案を請求しているとも思える。
2 招集通知にDの議題及び議案の要領を記載しなかったことの当否
(1)もっとも、Dの請求後、丙社に対し募集株式が発行され、Dの議決権の比率が百分の一から百二十分の一に下がっている。Dの議題の請求は適法といえるか。
(2)思うに、303条1項が株主提案権を認めたのは株主の意見を反映させるためであり、303条2項が一定の株主に提案権を制限したのは提案の乱発を防ぐためだと考えられる。そうすると、総株主の議決権は基準日において計算するのが制度趣旨に資する。
本件では、定時株主総会の平成29年6月29日の時点ではDは303条2項の要件を満たしていなかったが、基準日の同年3月31日の時点では満たしていた。
したがって、Dの議題及び議案の請求は適法であり、議案の要領を通知することの請求(305条1項)も適法になされている。
(3)以上より、招集通知にDの議題及び議案の要領を記載しなかったことは、不当である。
第2 設問2
1 Bの甲社に対する会社法上の損害賠償責任の有無
(1)本件賃貸借契約は利益相反取引(365条1項、356条1項3号)にあたるか。
まず、賃貸借契約は、賃料によっては会社に損害を与えるおそれがあるので「取引」といえる。
「利益が相反する取引」とは、会社と取締役との利益が実質的に相反する取引をいう。本件では、相場の2倍という高額な賃料で土地を借りることは、通常の賃料との差額分の損害を甲社に与える。また、丁社はB本人ではないが、Bが全部の持分を有することから、丁社が高額な賃料により利益を得ればその利益はBに帰することとなる。したがって、甲社に損害を与える反面、Bを利することになるので実質的に利益が相反しているといえる。よって、「利益が相反する取引」といえる。
(2)利益相反取引である本件賃貸借契約により、甲社は相場の2倍もの高額な賃料を払わされている。そうすると、甲社は、相場の賃料との差額分、すなわち1か月あたり150万円、1年総額1800万円の「損害」(423条3項)を受けている。本件賃貸借契約にあたり会社法上必要な手続を経ているから、利益相反取引において必要な取締役会(365条1項、356条1項柱書)においてBは承認しているといえる。したがって、423条3項3号によりBの任務懈怠が推定される。
(3)よって、取締役Bは、423条1項の責任を負う。
2 責任の額
425条1項1号、会社法施行規則113条により、控除すべき額は3600万円となる。
この3600万円から損害額の1800万円を差し引いた1800万円が責任を負う額となる。
以上
感想等
設問1:何を書いていいかわからなかったので、とりあえず303条の要件に問題文の事実をあてはめるということをやりました。ひととおり当てはめたあとで、20万株の新株発行により持株要件を満たさなくなることに気づきました。それからとってつけたような検討を行っています。流れの悪い答案になってしまいました。
設問2:私は、間接取引だと思いました。責任の額は、間違っています。Bの報酬を「月額」600万だと読み違えて、1年7200万、控除額(425条1項1号)が1億4000万だと勘違いしてしまいました。商法を最後に解き、時間がなかったので「年俸7200万なんてもらいすぎじゃないか」という冷静な思考は働きませんでした。問題文を落ち着いて読むことが大事ですね。