第1 設問1
1 課題(1)について
(1)Yの解釈の根拠は、11条1項である。本件契約書には「一切の紛争」は、B地方裁判所を第一審の管轄裁判所とすると定められているから、他の裁判所は管轄裁判所から排除することが「合意により」(11条1項)定められているというものである。
(2)管轄とは、裁判所の事務分担の定めである。民事訴訟法は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所を管轄とする(4条1項)一方で、財産上の訴えについては義務履行地を管轄としている(5条1号)。すると、例えば双務契約において債権者が訴えを提起する場合、原則として義務履行地は債権者の住所となるから(民法484条)、債権者の住所を管轄する裁判所に管轄が認められる。一方、被告である債務者の住所を管轄する裁判所にも管轄が認められる。したがって、法は複数の管轄が同時に成立することを認めているから、たとえ合意によって管轄を認めたとしても、管轄が一つ増えただけだと解釈すべきである。
(3)以上のように、Yの解釈とは別に、本件定めは管轄を一つ増やす効果を有するとの解釈を採るべきである。
2 課題(2)について
(1)Xとしては、17条の類推適用により、Yの申立てを却下するよう裁判所の職権発動を促すことが考えられる。
(2)17条の趣旨は、訴訟経済及び当事者の公平を図ることにある。この趣旨は、17条の定める「その管轄に属する場合」だけでなく、16条1項の「訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるとき」にも妥当する。したがって、17条を類推適用することができる。
(3)本件について17条の要件を満たすか検討する。
ア A市中心部とB市中心部との距離は約600kmであり、公共交通機関を乗り継いで約4時間かかる。そうすると、XやLがB地方裁判所に出頭するのは容易でないから、頻繁に期日を設定できず、訴訟の進行が遅れてしまう。したがって、「訴訟の著しい遅滞を避け」る必要がある。
イ また、Yは、B市だけでなくA市や全国各地にも支店を有するほどの規模の大きい企業であり、経済力や訴訟追行能力においてXと大きな差があると考えられる。また、本件事故はA市において起きたから、A支店の従業員が証人尋問等で出頭する必要がある。したがって、A市において訴訟を行い「当事者の公平を図る」必要がある。
ウ したがって、17条の要件を満たし、裁判所はYの申立てを却下してA地方裁判所で審理を行うべきである。
第2 設問2
1 裁判上の自白とは、期日における、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述である。裁判上の自白が成立すると、当事者は当該自白を撤回することができなくなる(不可撤回効)。
2 主要事実とは、法律効果の発生に直接必要な事実をいう。また、間接事実とは、主要事実の存在を推認させる事実をいう。裁判上の自白はどのような事実に成立するか。
思うに、間接事実は証拠と同様の機能を有することから、間接事実に裁判上の自白が成立すると考えると、裁判所の自由心証主義(247条)を害してしまう。したがって、裁判上の自白は主要事実にのみ成立すると解する。
3 各請求における④の事実の位置づけ
(1)元の請求は、履行遅滞による契約解除に基づく原状回復義務履行請求である。④の事実が主要事実かどうかは、当該法律効果の発生の根拠となる法律の要件に照らして判断する。
履行遅滞による契約解除の根拠規定である民法541条によると、その要件は(ア)履行遅滞、(イ)催告、(ウ)解除の意思表示である。本件契約におけるYの債務とは、契約書にキャンピングカーが本件仕様を有することが明記されていたから、「仕様を満たすキャンピングカーをXに引き渡すこと」となる。事故が起こる原因は多数あるから、④本件事故が起きた事実は、キャンピングカーが仕様を満たしていなかったことを推認させる一つの事実にすぎない。したがって、④の事実は、(ア)履行遅滞の事実を推認させる間接事実となる。
(2)追加された請求は、本件契約の債務不履行に基づく損害賠償請求である。根拠規定である民法415条によると、その要件は(ア)債務不履行、(イ)損害、(ウ)因果関係である。
(イ)損害を直接証明する一つの事実は、⑧本件損害事実である。これに加え、本件では、本件損害は本件事故が起きた時に発生しているから、④の事実は、⑧の事実と相まって(イ)の損害を直接証明する事実といえる。したがって、④の事実は、主要事実となる。
4 Yは④の事実を撤回できるか
(1)元の請求についての訴訟資料は、特に援用がなくても追加された請求についての訴訟資料になる。④の事実は、請求の追加前は間接事実であったが、請求の追加後は主要事実となる。そうすると、請求の追加後に自白の撤回は認められないのではないか。
(2)不可撤回効の根拠は禁反言にあるが、禁反言とは、手続保障が与えられていたにもかかわらず前言と矛盾する言動は許されないということである。そうすると、手続保障が与えられていない場合は禁反言が妥当せず、自白の撤回が許されると解する。
(3)本件では、元の請求については第1回口頭弁論が開かれ手続保障があるのに対し、追加された請求については手続保障が与えられていない。したがって禁反言が妥当せず、付加撤回効は認められない。
(4)以上より、Yは④の事実を認める旨の自白を撤回することができる。
第3 設問3
1 Zが本件日記についての文書提出義務を負うかどうかは、本件日記が「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(220条4号ニ、以下「自己専利用文書」という。)に該当するかどうかによる。
自己専利用文書に該当するかどうかは、①外部非開示性、②不利益性、③特段の事情があるか、という3点から検討する。
2 これを本件についてみる。
(1)日記は、本人しか見ないものであり、外部に公開することを予定していない文書といえる。Tは死亡しているが、死亡しているからといって死者のプライバシーが保護されない理由はない。したがって①をみたす。
(2)Tがすでに死亡していること、TはYの元従業員であったことからすると、キャンピングカーに不具合があった事実が明らかになっても、Yに不利益が及ぶことはあっても、Tには不利益が及ばない。したがって②をみたさない。
(3)問題文より、申立書に記載されているもの以外の事情を仮定する必要はないから、③特段の事情はない。
4 以上より、本件文書は自己専利用文書にあたらない。
以上
感想等
分量は5枚半(1行あたり25文字程度)です。
設問1 単なる作文になってしまいました。17条の類推適用はその場のでっち上げです。
設問2 一番配点が高いことから、頑張って書きました。これでいいかどうかは全く自信がありません。
設問3 作文その2です。文書提出義務が2年連続で出るとは思いませんでした。