刑事実務は、8回の実施を重ねた末、ようやく出題のパターンが見えてきました。
対策としては、まず、今後問われる可能性が高いところ(下記)を鍛えることが重要です。
読む本としては、有斐閣の「民事裁判実務の基礎/刑事裁判実務の基礎」(以下、有斐閣)の刑事実務の部分だけで十分ではないかと思います。ただ、公判前整理手続等の法改正に対応していないので注意が必要です。
余裕があれば、「事例に学ぶ刑事弁護入門」(宮村啓太著、民事法研究会)(以下、「事例に学ぶ」)も読んでおくといいと思います。この本には具体的な弁護活動が書かれていて、実務に触れる機会のない私にとっては大変参考になりました。
前例のない問題については、刑法・刑訴の短答・論文知識を総動員して現場で何とかするしかありません。できなかったとしても、こういうところでは差がつかないのであまり気にすることはないでしょう。
○勾留、保釈の要件(H27、H29、H30)
有斐閣の講義1に、事例とともにあてはめのポイントが書いてあります。当該事例と、過去問(H27、H29、H30)を検討しておけば十分でしょう。罪証隠滅のおそれの判断要素(罪証隠滅の対象、態様、客観的可能性、主観的可能性)は来年また問われてもおかしくありません。
「罪証隠滅のおそれ」に関し、その可能性が「現実的」といえるほどに高いものを要することを示した刑訴法百選13事件(最決平成26.11.17)を意識して答案を書ければベストでしょう。
また、裁量保釈の条文(刑訴法90条)が改正されているので注意が必要です。
「事例に学ぶ」の第1章と第3章も、勾留・保釈の各要件を検討するには参考になりました。
○類型証拠(H26、H29、H30)
2年連続で出てますが3年連続もあり得ます。
「証明力を判断するために重要であること」(刑訴法316条の15第3項1号ロ)の意味は、たとえば有斐閣には「当該証拠が、特定の検察官請求証拠によって証明されうる事実と齟齬矛盾したり、両立しない事実を指し示したりする内容を包含する証拠であり得るということ」などと書かれています。
これを踏まえ、例えばH30の設問2では、問題文中に提示された①~③の証拠が、検察官請求証拠のどの部分と矛盾する可能性があるか示すようにしました。
「事例に学ぶ」の第4章には、具体的な類型証拠開示請求書等の書式例が示されており、参考になりました。
○直接証拠と間接証拠(証拠構造)(H28、H29、H30)
この問題を解くにあたっては、なぜ間接(直接)証拠と判断したのか、自分の思考過程を省略しないで答案に書くことが重要だと思います。
例えばH30設問4(1)では、問題文中には「・・男が・・・ティッシュペーパーの箱を2つ重ねたくらいの大きさの電化製品に見えるものを持って同車の運転席側のドアから降りてきて」としか書いてなく、男がA(被告人)であるとも、電化製品がカーナビ(盗品)であるとも書いてありません。
男がAであること、電化製品がカーナビであることに推認が入っていますから、間接証拠であることがわかります。
怖いのは、問題文の他の部分を読んでいるうちに、いつの間にか頭の中で「男=A」、「電化製品=カーナビ」と置き換えてしまうことです。
証拠構造と推認過程を書けばいいだけなのですが、本試験では時間が押したりして問題文を読み違えたり、冷静な思考が働かなくなったりする可能性があるのがこの問題の難しいところです。
○殺意の有無(H28)
設問1つを使ってあてはめをさせる、というのは今後出る可能性があると思います。初期の予備試験では近接所持や犯人性がフルサイズで問われていましたが、ボリュームを落として設問の1つとする可能性は十分にあると思います。
あと、公判手続や伝聞も頻出ですが、これは刑事実務プロパーというよりは、短答・論文の対策をすることがそのまま刑事実務の対策にもなります。過去問を検討して、問われ方に慣れる必要があるだけです。
当たり前ですが過去問の検討は重要です。出題側としてはまだ試行錯誤を続けていて、過去出してみたけど難しすぎたのでレベルを落としてまた出すというパターンは今後もあるでしょう。例えば類型証拠です。平成26年の設問2で出されて、難しすぎて頭が真っ白になったことをよく覚えていますが、また出るんじゃないかという意識は常に持っていました。
最後に、可能であれば口述の再現を読んだらいいと思います。口述で問われた事項が論文で問われることがあります。例えば平成30年設問4の「証拠の厳選」は平成28年の口述で問われていました。
刑事実務は何を対策したらいいか全然わからなくて、上で挙げられている以外にもいろいろ本を読んで、ようやく答案を書けるようになりました。
ただ、7回論文を受けて出した結論は、あまり手を広げてもしょうがないということです。
過去問で問われているところはしっかり対策する、あとは間違ってもいい、という割り切りが大事だと思います。