刑事実務を解くにあたり、まず設問の数を確認しました。

去年が設問6まであったのに対し、今年は設問5まで。

作業量が減ったかと思いきや、設問2では3つの証拠を検討しなければならず、決して楽になっていないと思います。

 

第1 設問1
1 罪証隠滅の対象と態様
 対象については、V、W1、W2らの証言、窃盗の被害品、共犯者がいた場合の供述などがある。
 態様については、V、W1、W2らに働きかけて自己に有利な証言をさせる、被害品を処分する、共犯者と口裏を合わせるなどがある。
2 罪証隠滅の客観的可能性
 Vとは面識がないが、W1の勤務する販売店がわかっており、W2についてもK駐車場のすぐ隣の一軒家に住んでいることからAがW2のことを特定したり家を知りうるから、接触する現実的危険性がある。また共犯者のBは5月30日の時点で逮捕されていない。
3 罪証隠滅の主観的可能性
 窃盗罪(刑法235条)及び器物損壊罪(同261条)の法定刑には懲役刑が含まれており、実刑判決が出た場合は服役する可能性があるから、罪証隠滅に出る主観的可能性がある。
4 以上が思考過程である。
第2 設問2
1 刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)316条の15第3項1号イの「証拠の類型」
 ①については同条1項3号、②については同条1項5号ロ、③については同条1項6号である。
2 刑訴法316条の15第3項1号ロの「証明力を判断するために重要であること」
 ①については、甲8号証が立証しようとしているのは本件自動車とW2の位置関係や、W2が犯人の顔を見たことだと考えられる。そうすると、甲8号証と犯行現場の実況見分調書を見くらべて、W2の供述する位置関係や、現場の照度が男の顔を見ることができる程度であったか検討するのが重要である。
 ②については、乙1号証より甲が窃盗の犯行を否認していることから、検察官が甲8号証の証人尋問を請求した場合、Aの弁護人は326条の同意をしないと考えられる。そうすると、検察官はW2の証人尋問を請求するから、証人尋問に備え、W2の警察官面前の供述録取書と甲8号証を見比べて、内容に違いがないか検討するのが重要である。
 ③については、犯行日時ごろ、犯行現場にいた別の者の供述録取書と甲8号証を見比べて、内容に違いがないか検討するのが重要である。
第3 設問3
 検察官は、刑訴法316条の21第1項に基づき、証明予定事実を追加するため、「AとBが共謀のうえで行った事実である」旨及び「本件CDも被害品である」旨を記載した書面を裁判所に提出し、被告人または弁護人に送付したと考えられる。
第4 設問4
1 小問(1)
 W2は、器物損壊の犯行及び窃盗の犯行を直接見ていない。W2は、本件自動車の運転席側の窓ガラスが割れているのを目撃している。また、男がティッシュペーパーの箱を2つ重ねたくらいの大きさの電化製品に見えるものを持って本件自動車から降りたのを目撃している。前者は、器物損壊の犯行を推認させる間接事実である。後者は、カーナビの大きさが男が持っていたものの大きさに近いことから、窃盗の犯行を推認させる間接事実である。したがって、間接証拠である。
2 小問(2)
 刑事訴訟規則(以下「規則」という。)189条の2によると、証拠は厳選しなければならない。Bは共犯者だから、犯行についてよく知っており、Bの証人尋問だけを行えば十分だとも思える。そこで、裁判長は、検察官に対し、規則208条1項に基づき釈明を求めたと考えられる。
3 小問(3)
 たしかに、Bは犯行計画や当日の様子をよく知っており、Bの証人尋問だけで充分とも思える。しかし、共犯者であるBの供述の信用性は低い。一方、W2はAと面識がない。また、犯人の顔を見ていて、それが12番の写真の男すなわちAだと供述している。Aが犯人の顔を見たのは深夜4時であり、暗かったとも思えるが、車内ランプがついていたことから顔を判別するには十分な明るさがあった。また、W2は30枚もの写真を見せられたうえで12番の写真の男すなわちAを選んでおり、供述の信用性がある。したがって、Bに加えW2も尋問する必要性がある。
第5 設問5
1 刑事訴訟法上の問題
 刑訴法316条の32第1項によると、やむを得ない事由がなければ、公判前整理手続が終わった後に証拠調べを請求することができない。本件では、公判前整理手続が終わったのは8月21日であるが、Aの弁護人が領収書を手に入れたのはその後の9月15日である。したがって、やむを得ない事由があり、証拠調べを請求することができる。
 規則217条の31によると、やむを得ない事由があり提出できなかった証拠は、速やかに提出しなければならない。本件では、第1回公判期日前である8月28日に領収書がBに交付されているが、Aの弁護人が領収書を手に入れたのは第1回公判期日の9月12日の後である9月15日である。したがって第2回公判期日に提出しても規則217条の31に違反しない。
2 弁護士倫理上の問題
 規程28条3号によると、依頼者と利益が相反する事件を受任することができない。領収書は、共犯者であるBの事件の証拠にもなりうる。Aの弁護人はBの弁護人にもなりうる。したがって利益相反の問題を生じうる。

 

感想等

設問1:本当は設問1に時間をかけたかったのですが、他の設問がどの程度時間がかかるかわからなかったため、そこそこに切り上げました。設問1は最後に解くのが得策なのかもしれません。

設問2:また同じことを聞いてくるのでは、という予感はありましたが証拠が3つに増えることは予測していませんでした。

設問3:設問の指示は「検察官が順次行った手続」ですから複数手続を挙げようと思いましたが、訴因変更は必要なく、追加の証拠取調請求(316条の21第2項)は問題文に書いてあります。結局「書面を裁判所に提出」でひとつ、「被告人または弁護人に送付」でふたつと数えることにしました。

設問4:(2)と(3)は自信がありません。

設問5:刑事訴訟「法」上の問題点であり規則は問われていませんが、問題文にやたらと日付が書いてあるので最大限に使うべく、規則も持ち出しました。弁護士倫理は、わかりませんでした。