ネーハイシーザーに異変が起こったのは、この後だった。京都の上り坂にさしかかったあたりで、ネーハイシーザーは突然、原因不明の後
退を始めたのである。それも、作戦とか戦術とかいったレベルではない。ネーハイシーザー1頭がみるみるうちに先頭集団から脱落し、中団、そして後方へと置
いていかれていく。観衆がネーハイシーザーに何が起こったのかを理解する間もないうちに、ネーハイシーザーは向こう正面で馬群のはるか後ろ、そして勝負の
圏外へと消えていった。
故障か、と誰もが思ったが、ネーハイシーザーはふらふらになりながらもゴールにたどり着いた。獣医が診察したところ、ネーハイシーザーは心房細動を発症
していたことが明らかになった。ネーハイシーザーは、完走はしたものの、それは文字どおり「完走した」だけにすぎない。ネーハイシーザーの菊花賞の戦績に
は、3分44秒6という屈辱的なタイムが刻まれることになった。第4コーナーで先頭に立ってそのままレコードタイムで押し切ったビワハヤヒデから遅れるこ
と実に40秒、ブービーの馬からも30秒遅れたこのレースは、ネーハイシーザーにとって、塩村騎手にとって屈辱以外の何者でもなかった。