エリモダンディの話
牧場でも一番チビで、人気があったんです。でも驚いた。牧場では(新 馬戦を見て)凄い逃げ馬になるぞって話し合ってた。それが福寿草特別から、逆に凄い差し馬になっちゃった・・・ 』
馬を怖がる彼が、なぜか、僚馬であり、同じお父さんを持つシルクジャ スティスにだけは懐いていた。
調教が終わると、厩舎に帰るまでの道をいつもシルクジャスティスについて歩く。他の馬が近くにいると、それを押しのけてまで後ろにつく。
同齢でも体の大きなシルクジャスティスを、兄のように慕っているかのようだった。
厩務員仲間もみんなそれに気がついていて、慌てて”兄”を追いかけるエリモダンディーの姿を笑顔で見守った。
-平成10年1月25日、日経新春杯。
左前脚の第一指骨を骨折。全治9ケ月の重傷。
その時、命は助かったのですが、その2週間後の2月8日、腸ねん転に より他界。
『ダンディーは、いろんなことを教えてくれた。馬の乗り方。調教の
仕方。レースの勝ち方。普通の厩務員には行けないところに連れてって
くれた。それなのに、何も恩返しをしてやれなかった。自分だけいい思
いをさせてもらって、ダンディーは苦しんで死んでしまった。それが悔し
い。あいつには、いってやりたいことが沢山あります。何のために、生き
てきたんだって・・・』
(定益厩務員/たった一瞬の栄光:祥伝社黄金文庫)