西谷は身長が高くて騎手の中でも一番減量がきついって言われている。
サウナでしょっちゅう気を失い、食事も喉を通らない。また生来の負けん気の強さもあって、その度に悔し涙を流していた。
その為、競馬学校でも師範から何度も向いていないから辞めたほうがいいと言われていた。晴れて卒業となった時に最後まで引き取り手がいなかったのも西谷だった。
そんなときに何も言わずただ「うちに来い」と声をかけたのが瀬戸口調教師だった。
そして西谷に障害騎手という道を示してあげたのも師だった。
今年のお正月の話、来年2月に定年を迎える師がポツリと漏らした一言、 「お前がゴッドでG1とってくれたのが一番うれしかったな」
その言葉に西谷は
「ならば、それが2番目にうれしかったと言えるように、私はもう一回、 師匠にG1をささげます」
と誓った。
惜しいレースが続いた。
そして最後の障害G1で西谷はついに成し遂げた。
ゴールをして真っ先に西谷が探したのはいうまでもなく瀬戸口調教師だった。
「本当に最後にやってくれたなぁ…」くしゃくしゃの笑顔で迎えた師を見て
西谷はやっぱり我慢できないで泣き崩れたのであった。