国務省の通訳者をマネージしている人のスピーチを聞く機会がありました。とてもおもしろい日本に関するエピソードが聞けました。通訳者にとって“ジョーク”は悪夢なんだそうです。欧米の人はスピーチなどで一所懸命ジョークをおりまぜます。ところが、ジョークというのは文化的言語的背景が同じでないとすんなり通じないことが多い、そこで直訳以上のものが求められるからです。それに、エライ人がジョークを言って笑いをとろうとしているのに、通訳が悪いから笑ってもらえなかったなんて思われたらたいへんです。


ある時、公式ディナーか何かの時に日本からのゲストに対してアメリカ政府高官が食事前の軽いスピーチをしました。案の定高官はジョークを言い出しました。

日本人はちゃんと笑ってくれたので皆ほっとしました。ところが、後で、日本人の通訳は日本人ゲストに「今からこの方はジョークを言います。私が合図したら笑ってください。」と言ったことがわかりました。ジョークの通訳はしませんでした。私はその通訳は天才だと思いました。また、私がゲストだったら、ジョークの理解で緊張したりわずらわしい思いをするくらいなら、笑いどころを指示してもらえるだけのほうがありがたいです。でも通訳のボスは「そんな通訳は国務省では絶対雇わない!」と言っていました。文化の違いを感じましたね。スピーチに気の利いたジョークを織り交ぜ笑いをとることが大事な文化の人たちには、ジョークを大事だと思っていない日本人ゲストにはジョークは迷惑だという発想はないのでしょう。