基本的には留学経験のある法曹にしか通じないニュースですが、大ニュースです。


この夏発売のブルーブック(アメリカで法律文書を書く場合の注釈・引用のルールの本)19版で、日本の判例引用ルールが改正されていました!長いこと、日本の判例はアメリカ式に両当事者の名前で指定することにされており(Sato v, Yamada、とか)、(それに気がついていた極少数の)日本人には批判されていました。日本の判例では個人当事者の名前は甲野太郎さんとか仮名にされていることが多いですからね。このルールに従うとしたら当事者の名前探しに不毛な努力を強いられることになりました。また、日本の社会では、特に昔は、訴訟当事者になることはあまり名誉ではないと思われていたので、名前を引用された当事者の怒りをかう恐れもありました。


たぶん、この以前のルールは戦後の占領期に作られ、その後もアメリカ人の年配の日本法学者により引き継がれていたのだと思います。私は数年前のある機会に編集者たちに当事者名で判例を引用することはおかしいときちんと根拠を述べて意見したのですが、過去の二回の改定では何も変わっていませんでした。今回は、私の意見がやっと生かされたのでは全くなく、たぶん日本法部分の担当者が変わったのだと思います。また、日本の判例は日本の裁判所のwebsiteから入手することが多くなり、そこでは当事者名は検索の要素にもなっておらず、判決にも表示されていないので、以前のルールを守りきれなくなったというのもあるでしょう。インターネットの力ですかね。