Shinjiro side .
ピンポーン…
只今、深夜の12時。
こんな時間にくる奴なんて
アイツしかおらん。
いうて、顔が緩んでるのは事実で。
アイツにいつだって、心を動かされてる
って自分でも分かっとる。
ただ、こんなにも満たされない気持ちに
なってるのは
アイツがスキなのは、俺じゃないからや。
オートロックを外すと、控えめに
開かれるドア。
そして、可愛い姿が見えた。
「やから、こんな時間にくる時は
迎え行くから言うてや」
こんなん、他の男が放っておくわけ
ないやん。
一人で外を歩かせるとか心配以外の
何者でもないわ…。
ハァ、と
小さく溜息を零した。
「ご、ごめん」
千晃が申し訳なさそうに謝るだけで、
許せるなんて俺はバカみたいに単純。
( そんなん、千晃にだけやけど )
「また、寝れなくて。あの人ばっか
考えて寝れないの。馬鹿だよね」
千晃は、天国から地獄に突き落とす
天才やと思う。
ソレに振り回されて一喜一憂する
俺も大概やけど。
千晃が寝れない時には、俺が側におる。
それを言い出したのは、
間違いなく_______俺やった。
今から一年前のこと。
同僚の千晃は、同じ部署で働く
上司さんと付き合っとった。
当時から千晃一筋やった俺やけど、
相談相手として千晃から何度も
話を持ちかけられて
その度にクルシかった。
話を聞く限りラブラブな二人やった
はずやのに、いつも通り居酒屋で
呑んでた時
いつも笑顔の千晃が____泣いてた。
『ち、あちゃん!?どうしたん、
どっか痛い?』
焦りまくる俺に対して、千晃はフルフルと
首を振って否定した。
『…別れたんだあ…』
『…っ、』
いっぱい泣いとるくせに、無理して
笑おうとする千晃に胸が痛んで
どうしようもなかった。
それと同時に、キミへの想いがアフレタ。
『俺…ちあちゃんの為なら、
何でもするで』
そんなクサいセリフ、この先言うことは
きっとないはずで
だから、そう言ってしまうくらい俺は、
( 俺がその笑顔を守りたい )
そう思ったんや。
あの人ばっか考えてて、寝れない
千晃は見ていられなくて
『ちあちゃん、寝れん時は俺の
家に来てええよ』
思わずそう言っとった。
そう言うても中々家に来んかった
けど、ある日の深夜十二時にキミは来た。
分かっとる。
タイセツな人がおるってことくらい。
やけど、俺が側におりたい。
ただそれだけ。
「はい。いつものやつ」
千晃が家に来た時にいつも出すホットミルク。
「ありがと」
フーと冷ましながら飲む千晃が、可愛い。
この瞬間が、たまらなく愛しく感じる。
「ほら、ちあちゃん。おいで」
ミルクを飲み終えたちあちゃんを
寝室へと導いて、二人でベッドへと
足を踏み入れる。
「ふふっ、あったかいね」
頬をピンクにしたちあちゃんも、
二人で入ると少し狭くなるベッドも、
ちあちゃんから香るシャンプーの匂いも、
全部がタイセツで、イトシクテ。
( そんなこと、キミは知らない
だろうけど )
「真ちゃん…、いつもありがとう」
「ええよ。俺は、ちあちゃんの側におるから」
これが、俺なりの精一杯の告白。
千晃は気付いてない様子やけど。
「おやすみ」
そう言いながら、ソッと布団をかけた。
「おやすみ」
そう言い残して、眠りに堕ちていった君。
すぐに規則正しい寝息が聞こえてきて、
千晃の頭を優しく撫でる。
「________… な、おやくん」
キミの頬に流れた一粒の涙に、
見て見ぬ振りをする。
ギュッと強く抱きしめる。
「ちあちゃん、好き。俺のこと
スキになってや」
そんな呟きは静かな寝室へと響いて、
それがなんだか虚しかった。
どうしても、君がいい 。
朝、キミが起きたら俺のことを
スキになってくれてたらええのに。