昨今では、危険ドラッグに使用されている薬物を瞬時に解明するキットなども出回っているそうだが、それはほんの一部。
遺伝子組織の解明キットでさえ一万を切り、誰でも簡単に遺伝子組織を分別できる世の中になったもんだから大したもんだ。
昨日、ちょうど主治医と「警察の検査結果が出るまでは引っ越すことも困難」と話していただけに、なんともタイムリーな話だ。
そこで深読みしてしまう悪い癖が出てしまうのは、前科モンならではの警戒心だろうか。
「逮捕ってことですか!?」
「即留置場ってことですか!?」
いつもは冷静淡白な口調も、このときばかりは取り乱している。
警察は苦笑しながら「返したいもの(恐らく一緒に押収されたzippoのことだろう)もあるき、この日に来て欲しい」とだけ言い残して電話が切れた。
口では言うのは簡単なことだ。例え検査結果が陰性反応を示していたとして、その図式を示した書類を突きつけられても僕は警察を疑うに違いない。腑に落ちない。
過去に加古川警察で行われた“でっちあげ捜査”は氷山の一角に過ぎず、警察はあくまで自身の立場を誇示し、それを世間に認められたいが為なのか、中にはポイント稼ぎという欲に目が眩む輩も少なくない。
何にせよ、これで一件落着とは思えない。仮に無罪放免で、薬事法が適応される寸前の出来事であったとしても、既に狭苦しい田舎の僻地に広く浸透してしまった悪評から逃れることなどできない。
僕はこの“づつない”心境を主治医に打ち明けたところ、渋い顔つきを浮かべ、「環境は大事ですよ」と同情してくれている。
兵庫に帰ったとしても頼れる人などいないが、見たもの、聞いたもの、感じたもの…そのありとあらゆる全てが僕に共感してくれているように思う。もちろん、子供の頃に胸に抱いた懐かしい気持ちを取り戻すことで、心身ともにリフレッシュできそうな気もする。
ほんの数パーセントだけど、可能性が生じた。これにより明日以降にも希望が持てる。
いきものがかりの「帰りたくなったよ」をエンドレスで聴いてる。成功への道標として田舎であれ越してきたのなら筋は通るが、僕は何一つ目標を掲げず家を飛び出したのだからわけが違う。
中村に来るなり最初に思ったこと。
家は葬られたけど、帰りたくなったよ。