実を言うと僕が「風の谷のナウシカ」を鑑賞するポイントは主にこの部分である






劇中に登場する兵器がどんな風に運用されているかを考察しなから鑑賞するのが、僕的にオツなのである






アニメ映画「風の谷のナウシカ」に登場する兵器は、一見すると古めかしい印象を受ける






時代で言うと丁度、第2次世界大戦中にドイツやロシアの軍隊が使っていたような「鋼鉄の肌触り」を感じさせる武骨なデザインで描かれている





そして古き善き時代の冒険アニメーション映画に共通する要素は強く反映されている






それは

1. スピード感
2. 奇想天外
3. 単純明快

という三つのセオリーが貫かれている





奇想天外と言えば「機動戦士ガンダム」ほどではないにせよ、動力源や物理的にどうかと考えると疑問符のつく兵器が多い





この作品において重要なのは3番目の要素である「単純明快」であり、この世界で運用されている兵器は投入される用途が一つしかなく分かりやすい






現実の戦争は兵器運用が極めて複雑であり、カテゴリーの異なる組織で容姿も用途も同じ兵器があるなど普通である






この世界ではおそらく情報を得るために必要な通信装置すらなく、近代的な兵器体系でありながら通信手段は古代と変わらない「伝令」と、機内であれば「伝声管」という原始的な手段に頼っていると考えられる






つまり質量の大きな兵器を持つ側が、それを持たざる側を征服することが大した問題ではない世界の戦争であると言える






それでは、アニメ映画「風の谷のナウシカ」に登場する兵器を具体的に解説してみよう






その1:トルメキア軍大型輸送艦









日本のアニメ作品ではお約束となっている超大型の飛行機なのだが、宮崎駿作品では概ね「ふね」と呼称されている



航空力学的に考えて、こんな巨大な飛行機など陸から離れられるものか否かわからない



運用目的は単純に兵団の輸送だが、落下傘部隊を空挺降下させるようには描かれていない



対空防御は機体各所に設置されている銃眼から突き出た「有人式」の重機関銃のみ














その2:コルベット


トルメキア軍が大型輸送艦の直掩で警護するために配備している副座式戦闘機で、旧時代のさらに旧代で活躍したイギリス海軍の巡洋艦の一種から名前を戴いている










護衛艦として運用される軽巡洋艦は排水量が大きい順番に「フリゲート」「スプルーアンス」「コルベット」があったのだが、最も小さくて機動力に優れていた




武器は前述の重機関銃以外にもロケット弾が装備されており、熱源誘導はできないながら破壊力は高い









その3:ガンシップ


ナウシカの乗るメーヴェもそうだが、この大きさの航空機だけは「ジェットエンジン」によって推進力が得られている




石油も枯渇しているような時代にあってオクタン価の極めて高いジェット燃料を、どうやって精製しているのか不可解ではある




基本的には単座式の制空戦闘機であり、機関銃と噴進砲(ロケット弾)を武器に敵の輸送船団を襲撃する





















その4:装甲兵









トルメキア軍の歩兵戦力の主力であり、スーパーセラミック製の甲冑を装着しているため爆風や火炎放射器などの攻撃にも対抗できる




突撃銃を使用することもあるが、概ねスォードやトマホークを駆使した白兵戦を旨とする









その5:戦車








短砲身の大口径砲を搭載した無砲塔戦車であり、厳密に言えば「自走砲」や「突撃砲」のカテゴリーに入る



大きさから考えて重戦車並みの質量を誇り、主砲の口径はだいたい150mmくらいの砲弾を使用しているものと考えられる




おそらくこの世界ではトルメキア王国だけが「戦車」を保有しているため、迅速な方向転換ができればさえよく、車体の方向さえ定まれば有効弾を送り込むことができる









このように、この世界では兵器の運用目的などは画一的であり、敵よりも大きな火力と防御力さえあれば軍隊として強大であり、情け容赦ない侵略戦争が横行しているのだと考えられる






アニメを観る側は複雑に戦術論や軍律を考え悩む必要はなく、単純明快に「兵器とはこういう風に使うんだ」と感心して観ればいいのである









おわり