デヴィッド・リーンは大作映画専門監督のイメージが強いが、そのきっかけとなった作品が「戦場にかける橋」だった。フランス人ジャーナリストであるピエール・ブールの実体験を基にした原作の映画化作品。
日本軍人と英国軍捕虜が協力してタイのクワイ川に橋を建設する映画だが、美談ではなく軋轢と意地の張り合いのような展開ではあった。しかし完成するとどちらも達成感に満足する。だが結局は最後に連合軍の破壊工作が行われる展開で、映画は狂気とむなしさで幕を閉じる。
映画では破壊された橋だが、実際には現存し今も観光地として残っているという。破壊したほうが映画的なカタルシスが得られるからなのだろう。映画のために事実を改ざんするのは良くあることだ。
当時としては日本人を野蛮人と描いていないことが評価されたようだが、やはり下等民族的な視点は否めない。
リーンにはどこか異民族を冷笑的にみる視線があったように思える。それは前作「旅情」のアメリカ人オールドミスにもみられるし「戦場にかける橋」のウイリアム・ホールデンにも感じられる。
脚本は「猿の惑星」で脚本を書いたマイケル・ウイルソンと後に「ナバロンの要塞」を作ることになるカール・フォアマン。二人とも当時は赤狩りのブラックリストに載っていたためタイトルに実名は出せないでいた。なので脚本自体にアメリカ人を批判的に描いていたとしても納得は出来る。
とはいえ後のリーンは「アラビアのロレンス」や「ライアンの娘」遺作の「インドへの道」ではそのシニカルさが英国人自身にも及んでいるので、案外リーン自身は突き詰めると人嫌いだったのではないのだろうかと思えてしまう。
映画全体の音楽担当はイギリスの作曲家マルコム・アーノルドだが、有名なテーマ曲「クワイ川マーチ」はケネス・アルフォードが1910年代に作った「ボギー大佐」という既存の曲だった。
その替え歌が「サル ゴリラ チンパンジー」になったのは、原作者ピエール・ブールが収容所時代の日本人とのカルチャーギャップをモデルに「猿の惑星」を書いたことと関係があるのか否かは・・・定かではない。
