産業革命以降、移動手段としての乗り物は次々と発明され発達し、その大半は誰もが身近な存在として利用している。
しかし大富豪がたまに搭乗する宇宙ロケットがまだ特殊な存在であるように潜水艦にも一般人が乗るということはまずない。これからも気軽に乗るということは考えられないだろう。
自家用車はありふれており自家用船舶も見かけることはあっても自家用潜水艦というのは聞いたことはない。わざわざ海中に潜って海を渡る必要もない。考えられるのは移動目的ではなく海底を眺める手段としてくらいのものか。
飛行機は時折富豪が持っていたりするので中には潜水艦を所有している大富豪がいるかもしれない。ほとんど007の悪役を連想してしまう。
007が出てきたからというわけではないが潜水艦の出てくる映画はずいぶん作られている。
兵器として開発された乗り物なので必然的に戦争映画やそれに類する作品が大半であり、当然ながら出演者は男ばかりになる。実際にはさぞむさくるしい閉鎖空間なのだろう。閉所恐怖症には最も相応しくない乗り物だろう。
そんな男の乗り物なのだが、しょこたんこと中川翔子が兵器ではない深海探査潜水艦に乗った体験をラジオで語っていた。それによるとその潜水艦の底部には高級な酒瓶が入っているそうだ。
別にメカニカルな要素で入っているわけではなく、事故等のトラブルで浮上できなくなったときに別れの盃を酌み交わすためだという。ヤケ酒という意味なのだろう。
それを聞いて別離に際して美酒を酌み交わす詩を思い浮かべた。
この杯を受けてくれ どうぞなみなみ注がせておくれ
花に嵐の例えもあるぞ 「さよなら」だけが人生だ
漢詩の「勧酒」意訳したのは井伏鱒二。
そんな大げさな詩ではないのだろうが訳文によるものか人生の諦念観を漂わせているように思う。
とはいえ実際に、もう浮上できないと死を目前に諦めていても落ち着いて酒を酌み交わすことができるのだろうか?
