完治しない


だからって死ぬのを待つしかないということはなかった

現代医学の中で、ベーチェット病の原因療法に最も近い
というか最も症状に対して効果を鎮静化できる薬は存在していた

つまりは最高の対症療法
それがステロイドだった

ステロイドは体の免疫系統の機能を、全体的にダウンさせる

要は一旦体のスイッチをきるみたいな感じだ

だから白血球異常で炎症が発生するのは完全に止まる

つまりベーチェット病には最適な対症療法とも言える

しかし一旦体のスイッチをきると、再び元の状態まで立ち上げるのは大変

ていうのは、体全体をダウンさせるってのは、異常じゃないもの、というか必要なものまでもダウンさせてちゃうから

だから、ステロイドを使うと、他の病気への対抗力がかなり弱くなる

ウイルスへの感染リスクがハンパなく増大する

逆にステロイドを使う前に、体に疾患があった場合、そいつを悪化させる可能性が高くなる

だから、ある意味、最後の砦的な薬だった

まあでもそれ内服すりゃベーチェットよくなるじゃん

って思ってたし、免疫下がる以外の多少の副作用はあるけど、それ以上に俺を愕然とさせたデメリットがあった

退院までに相当な時間を要する

ってことだった

実は、ステロイドは体内の副腎ってとこで作られている

免疫のバランスをとるために、体が勝手に作ってんだろうね

だから逆言うと、普段ステロイドはある程度体内で作られる必要があるってこと

まあそれはいいとして、治療のためには外部から大量のステロイドを投与する必要があるんだけど、そうすると体内の副腎はステロイドを作らんくなるらしい

だからステロイドを投与して、すぐ投与を中断するのはいけない

免疫も落ちてるし…

だから最善の方法は、ステロイドの投与を時間をかけて続けていき、だんだん減らしていき、ゆくゆくは退院する方法だった

そっか…
それでもそんなにかからんでしょ
楽観的に思ってて

退院までどのくらいかかるのか主治医に聞いたら

1ヶ月くらいは最低

これを言われたのは12月下旬、いわゆる2010年末

20歳の俺にはそれが意味するものがリアルに感じられた…

さらに主治医からの一言

『成人式は残念だけど行かせられない』

めちゃめちゃ萎えたね…

続く
病気への対処は、対症療法と原因療法
この2つの方法でアプローチされる

仮に通常の風邪と呼ばれる症状を患ったとき
風邪の症状である発熱を解熱剤で、風邪の原因であるウイルスを抗生物質で除去する

つまり前者が対症療法、後者が原因療法ってこと

だから一般的に原因療法の完了は完治を意味する…

だけど、俺が入院してすぐは、というか大腸ファイバーするまでは、熱源がどこにあるかは読めなかった

だから熱が上がっては、解熱剤で無理矢理下げる対症療法しかできなくて、薬の効果が切れたらまた熱が上がるっていう負のスパイラルだった

それで前述の通り、熱源は腹ん中の潰瘍にあった

そっから診断がつき、本格的な治療に入る…

まあ概要を言うと、ベーチェット病は、ヒトの白血球(免疫)が過剰に反応してしまうがために、体のあちらにこちらに炎症を引き起こすという病気

その中でも俺は、皮膚や消化器系の炎症、特に腸管の炎症が強い、腸管型ベーチェットという部類に入った

幸いにも、ベーチェット病最大の主症状である眼症状は該当していなかったので現時点で失明のリスクはなかった

だけど、残念にもベーチェット病の明確な原因はわかっていない

遺伝等の内的要因に加えて、何らかのウイルスなどの外的要因とか様々な条件が重ならないと起きないし、その条件も今のとこ不明

だから、発症の可能性は1万人に2人いるかいないかくらいらしい

政府公認の難病に指定されるだけのことはある



まあ要するに、原因療法はできない
ということは完治しない
この結論に至った


続く…
この世に生まれて20年

あと数ヶ月で21年を迎えるわけだけど、生まれてこの方、入院するほどの病気なんかにかかったことはなかった

今回は俺のかかった(てか今も闘ってる)病気について書こうと思う

異変に気づいたのは12月始め

口内炎からだった
まあ昔からたまに口内炎できては、痛いな~と思いつつ、ほっとけば治るだろうと思ってた…

てか実際ほっとけばなんとかなってた

そんでその当時、運動生理学実験とか新しく始めたバイト、体育科の年末ダンスに熱を入れてた俺

まあ忙しかったけどすげー充実してて楽しかった

そんな中で、口内炎が超巨大化して、痛み出す

モノが食えなくなった

さらに足に激痛が走る
ダンスのやりすぎによるものなのか、足が悲鳴をあげ、疲労骨折気味になった

バイトでも熱っぽさを感じ…

まあちょっと頑張りすぎたのかな

とだけ思ってた


そしたら口内炎の症状はさらに悪化

近所の病院行ったら、医大へ回れと言われ、医大に行ったらまさかの入院

口内炎で入院すんなんてギャグだろっと思ってた

だけど入院した次の日から、高熱に襲われた

38.8 39.6 40.1
日を追うごとに熱は上がっていく

でも原因がわからない

わけわからん熱への不安な気持ちは、同時に、皮膚症状と腹痛として俺を苦しめた

そして、その症状が俺に、これがただの口内炎じゃないことを告げることになる

人生初の大腸と胃の内視鏡検査

いわゆる大腸ファイバーと胃カメラ

カメラを体内に入れるのは気持ち悪かったが、それ以上にカメラに映る体内は荒れていた

腸内に、突如できた巨大口内炎みたいな潰瘍が無数にあった

もう少しで腸に穴が空きそうなくらいなのもあった

熱源がわかり、診断が確定した

腸管ベーチェット病 不全型

これが今回かかった病気

原因は不明

そしてそれ故に現代医学では完治させる手だてがないらしい

さらに食事制限がついた
俺の好む食事はほとんどNGだった

唯一、運動制限がなかったのは俺の救いだった

だけど俺の人生を狂わすのは間違いない

厄介な持病になっちまった

そう思ったとき俺の第一次入院生活は2週間を過ぎていた

次に続く