関西本線非電化区間の活性化に向けて、京都〜伊賀上野〜関間で実証運行が続いている観光列車「はなあかり」。



実証2回目となる11月26日、縁あって伊賀上野〜関間でモニター乗車する機会を得た。趣旨は、観光列車の実証運行の意義を広く発信するとともに、線区や沿線地域の活性化について考えてもらおうということのようだ。

 個人的にも初めて乗る「はなあかり」には興味津々、40分程度の短い時間であるが、関西本線で初めて運行される豪華観光列車はどのようなものだろうか、期待は自ずと膨らんだ。

 乗車当日の伊賀上野駅ホームは、忍者の被りものをした市長をはじめ、大勢の関係者や市民が小旗を振って出迎えている。正直、その熱量に圧倒される。そのような光景は見たことがない。この列車の運行に並々ならぬ思いがあることがひしひしと分かった。



そのような中、私は意気揚々と乗り込んだ。列車は3両編成、関寄りの1両目が個室タイプのスーペリアグリーン車、2、3両目は開放座席型のグリーン車である。私が指定されたのは3両目のグリーン車で、基本はツアー客への配慮から、他の車両への移動は控えてとのことだった。

 さて、車内の設えはというと一言で豪華なもの。



床は花柄の絨毯敷、座席は2人または4人掛けの異なる仕様のシートが配され、それぞれに大型のテーブルが用意されている。大きな窓は眺望が良く、車窓を楽しむにはうってつけだった。深々としたシートに腰掛けて外を見やれば、見慣れているはずの沿線風景が違ったものに見えるのが不思議だった。私は何度もこの区間を通常の列車で通過しているが、全く非日常感があった。大きな窓に広がる霊山の山容、紅葉に彩られた鈴鹿川の渓谷もこんなに素晴らしいものかと感動した。


普段は普通列車で停車する途中の駅もかつての急行列車のように通過していくのも妙に面白い体験だった。とりわけ駅ホームや沿線の踏切や道路から列車に手を振る人たちに、こちらも手を振って応える行為が見ず知らずの人と心の交流が出来ているようで楽しいものだった。

 列車の乗り心地も豪華な設えを損なうことがない快適なもので、一般のディーゼル気動車にありがちな揺れや騒音は極力少なく長時間の乗車でも苦になることはないだろうと感じた。

 また、車内放送で沿線の見どころなどの案内が丁寧に説明されていたのも好感が持てた。かつて、SL時代の難所と言われた加太越のエピソードが紹介されていたのは、往時を偲ぶに足りるものだった。

 終点、関駅も保育園児をはじめ多くの人たちの歓迎を受け盛り上がりを見ることが出来た。

 実証運行は12月3日に3度目が予定されている。3回のツアー募集は定員以上の申し込みがあり、早々に完売したとのことで、上々の滑りだしとなった。物珍しさも手伝っているだろうが、地元としては本格運行に是非つなげ、関西本線の活性化に資したいところ。



人口減少で線区内の利用だけでは維持が難しいというのなら、都市部からの誘客を進めるしかない。本来なら名阪間連絡の使命を担うべきであるが、その機能はすでに望むべくもない。ならば、乗ること自体を楽しめる観光列車の誘致は線区の魅力を高める有力な手段といえる。今回の「はなあかり」は評判通りの魅力的な列車だった、JR西日本には、このほかにもトワイライトエクスプレス瑞風などの魅力のある列車がある。こうした列車を誘致できるように三重県はじめ沿線自治体が主導した今回の仕組みを継続し、行き先として選ばれるため、沿線地域の魅力の向上、特におもてなしの満足度を高め、運行事業者、沿線地域がウィンウィンの関係となるようにしていきたい。不断の努力を私も微力ながら当事者の一人として続けていきたいと思う。