読者の皆さまには、いつも私のお話しを楽しみにしてくださいまして、ありがとうございます。

…と、本館のお話し記事の書き出しは、こちらでは言えない感じですねあせる

 

某動画サイトに登録して、たくさんの韓ドラを見て、勝手に盛り上がってお話しまで書いちゃいましたが、世の中もうそんなに韓流ブームってわけじゃないんですよね。

今回のお話しのベースとなった「太陽の末裔」も、きっと皆さんご覧になってないのでしょう…。

キューブが、どんなドラマのお話しを書いたんだろうって、期待されてた読者さまには、がっかりさせちゃったら本当にごめんなさい。

 

でも、本館で復活し、この別館を立ち上げたこと、良かったって思ってます。

何より、書く楽しさを思い出せましたからね…。

 

韓国では、とてもヒットしたドラマだったようですから、いつか見る機会がありましたら、その時は「そういえばキューブさんがこれのお話し書いてたっけ」と思い出していただければ、それで十分です。

 

そのためにも、Finalまでがんばりますよ。

ぶっちゃけ、10話前後の大作になると思いますので、ご覚悟をウシシ

 

では、第2話です。

どうか、お楽しみいただけますように…

 

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 ~星降る島のサンクチュアリ~ ≪2≫

「出前頼みましたよ。いつもの石焼ビビンバで良かったんだよね?・・・」
バスルームの外からシジンが声をかけると、シャワーの水音が一瞬止まって、モヨンの「イエス!」という声が聞えて来た。


二人きりでウルクの難破船の島へ行ってからは、シジンは休暇の時にはモヨンの部屋に泊まるようになっていた。
ドライブやショッピングも楽しいが、ただでさえ会える時間が少ない上に、いつ何時呼び出しがかかるかわからない状況で、誰にも邪魔されずに二人で過ごすにはモヨンの部屋が一番だった。

「はあ、さっぱりした・・・」
髪にタオルを巻きパジャマ代わりの薄いTシャツ一枚の姿でバスルームから出てきたモヨンを、目を細めて見つめながらシジンが缶ビールを渡す。
「ああ、いい光景ですね・・・」
「なんだか目つきがいやらしい・・・」
モヨンが睨む。
「そんな姿、他の男には絶対に見せないでくださいよ!・・・これだけは僕だけの特権ですからね!」
シジンが釘を刺すように、人差し指で指さしながら言った。

モヨンは、他の男という言葉に一瞬ドキリとして胸に手を当てた。
つい数時間前のミン・ユンギとの再会が脳裏をかすめ、彼が最後に言った言葉が蘇った。
『本当の理由は他にあるんだ・・・ヘソン病院にはお前がいたからさ』
モヨンは、ブルっと頭をひと振りしてその情景を打ち消した。

「特権って何よ?・・・そんなものあげた覚えはないけど、言われなくたって他の男なんかに見せないわよ。」
モヨンがことさら呆れたように笑ったところで、家のチャイムが鳴り出前が届いた。
財布を手に立ち上がろうとしたモヨンを、シジンが強引に引き戻す・・・
「ほら!・・・今、他の男には見せないって言ったばかりでしょ?・・・」
「あっ、そうか!・・・」

―確かに、出前のお兄さんも男だわ・・・

「僕が受け取るから、モヨンさんは玄関から見えないところに行って!」
大真面目な顔で部屋の奥を指さすシジンに、モヨンはこらえ切れず吹き出した。


モヨンは、こんな他愛のないやり取りにこそ何よりの幸せを感じていた。
二人きりでいる・・・それはすなわちシジンを取り巻く世界が今このひと時だけは平和だということだ。
何かあれば、どんな時も容赦なく任務を告げる電話は掛かってくる。
そして、シジンはそれがどんな時であっても、電話に出ないことはない・・・
そう、たとえそれが愛を囁いている時でも、もちろん今まさにキスする瞬間であっても・・・
だから、スマホを耳に当てたシジンがふっと背筋を伸ばし、送話口に向かって『団結!』と答えた瞬間、モヨンはそっと心の中で耳をふさぐ・・・せめて愛する人を連れて行ってしまう呪文のような会話が少しでも聞こえないように。

だからこそ、一瞬たりとも時間を無駄にはできなかった。
常に切迫してるわけではないにしろ、言いたいことはその場で全て言っておかなければならないとモヨンは思っていた。
シジンが死んでしまったと思っていた一年の間に、どれ程思い知らされただう・・・
あれも言っておけばよかった・・・これもしてあげればよかったと。


 

真夜中、明かりの消えた部屋でシジンは、ゆっくりと目を開けた。
腕の中では、ビデオを見ながらいつの間にか眠ってしまったモヨンが規則正しい寝息を立てている。
その寝顔になぜかほっとしながら、ほんの少しだけモヨンを抱きしめる腕に力を入れた。

『本当の理由は他にあるんだ・・・ヘソン病院にはお前がいたからさ』

今日の出来事がずっと頭から離れなかった。
突然現れたミン・ユンギという男が、モヨンに向かって最後に放った言葉はどんな意味を持っているのか。
ただ医大の後輩が勤めている病院だからということなのか、それともモヨン自身に関心があったからということなのか・・・
考えるまでもないとシジンは思った。

―答えは後者だ。

どういういきさつで別れたのか詳しくは聞いていないが、一度は付き合ったことのあるモヨンの初恋の相手。
そんな男が、明日から毎日モヨンのそばにいるのかと思うだけで、胸がざわついた。

そんな時、不意に腕の中のモヨンが身をよじって、苦し気に眉間にしわを寄せた。

―まただ・・・

モヨンは、時々夢にうなされることがある。
特に、今夜のようにうたた寝からすっと寝入ってしまった時に。
それは、明らかにウルクでの怖かった体験から来る夢で、崖から落ちる夢や、銃口を突きつけられている夢だ。

シジンは、モヨンと朝まで過ごすようになって、初めてその深層心理にあの時の恐怖が根強く残っていること事を知って愕然とした。
一般人であるモヨンが経験するには、あまりにも強烈で恐ろしい体験だったことは、考えるまでもない。
それは、トラウマやPTSDといった心の病を引き起こしてもおかしくない経験だ。

シジンは、この部屋に泊まるようになった始めの頃、モヨンの心を心配して、その夢について尋ねたことがあった。
しかし、モヨンは笑いながら答えた。
「確かに、怖い夢は見るの。でもね、必ず最後にはあなたが助けてくれるのよ・・・ウルクでもそうだったでしょ?」

確かに、モヨンは夢でうなされいても、突然飛び起きるようなことはなく、最後には穏やかな表情で深い眠りに落ちていく・・・
だからと言って、その恐怖は自分と関わったからこそ味わったものだという思いがシジンにはあった。
シジンは夢にうなされるモヨンを見るたびに、いつも心を痛めていた。

そして、今もモヨンは夢の中で苦しんでいる。
最後には、夢の中の自分が助けに来るんだとモヨンが言ったとしても、思わず抱きしめずにはいられなかった。

すると、モヨンが瞼をうっすらと開けて、シジンを見上げた。
シジンは、モヨンの髪を撫でながら「また怖い夢?」と聞いた。
モヨンは、まだ開けきらない目で微笑むと、シジンを見つめたまま答えた。
「うん。でも、夢の中であなたが抱きしめてくれた気がして目を開けたら、本当にあなたがいたわ」

「ずっとこうしてるから、安心して・・・」
シジンは、もう一度眠りを促すように、モヨンの頭を抱き寄せた。

しかし、モヨンはシジンの胸に顔を押し付けながら「ねえ・・・」と小さくつぶやいて話し始めた。

「今日、嘘ついたでしょ?」
「えっ?・・・」
シジンは、モヨンの不意の一言に驚いてモヨンの顔を見ようとした。
しかし、モヨンはシジンの背中に回す腕にさらに力を入れながら言った。
「今日、本当はカフェの先の交差点まで来てたでしょ?・・・」
「えっ?・・・ちょっとモヨンさん?・・・」

モヨンは、抵抗するシジンの胸に耳を強く押し付けた・・・
耳に流れ込んでくるシジンの鼓動が急に大きく速くなり、言葉より正直にモヨンの問いかけを肯定していた。

モヨンは、顔を上げてシジンを見つめた。

シジンは、モヨンの冷ややかな眼差しに、射すくめられたように小さくため息をつくと「ごめん」と謝った。

「その場で聞いてくれたらよかったのに・・・隠すようなことじゃないんだし」
 

「そ、それならモヨンさんこそ、どうしてすぐに話してくれなかったんだよ・・・そうすれば僕だって余計な気を回さずに済んだんだし。」
 

「そんな・・・聞かれてもいないのに自分から”今日、元カレに会っちゃって~”なんて今の彼氏に話せるわけないでしょ!」
 

「それじゃあ、僕が見てなかったら話さなかったの?」
 

「あたりまえじゃない!・・・ただ元カレっていうだけで、あなたに対して何も疾しいことなんてないもの!・・・それともただの元カレなのに、ユ少領は嫉妬しちゃったのかな?」
 

「嫉妬なんてして・・・」
してないと言おうとして、思わず言葉を飲み込んだ。
モヨンがにやりと笑い、その唇が「嘘つき・・・」と動いた。

―した・・・確実に嫉妬したよな・・・

シジンは、心の中で白旗を挙げて目を伏せた。
いつもの小競り合いは、今回はモヨンに軍配が上がった。

「でも、どうして僕があの交差点まで来てたことがわかったの?・・・」
シジンは、不思議に思って尋ねた。

「だって、あの時カフェの近くでずっと待っていたにしては、あなたの息が少し上がってたから。」
モヨンが、したり顔で答えた。
そしてモヨンは、ふっと真顔になるとシジンの頬を包むように両手を添えながら言った。
「心配しないで。何があろうと、私が一番好きなのはユ少領だから・・・」

それからモヨンは、それでも心配顔のシジンの顔を引き寄せると、その唇に自分の唇を重ねた・・・
モヨンの柔らかな口づけは、ちょっとしたアクシデントに見舞われた今回の休暇の最後に、甘い彩りをくれた。
シジンは、モヨンの体をきつく抱き寄せると、その首筋へ顔をうずめて行った・・・



翌朝、モヨンが目覚めると、シジンはすでにいなくなっていた。
一瞬、モヨンが眠っている間に呼び出しがかかったのかと思い飛び起きたが、テーブルの上に置かれたメモを見て思わずほっと胸を撫でおろした。

<おはよう。ちょっと走ったくらいでは
息が上がらないようにトレーニングして
から司令部に戻ります。
良く眠っているから起こさずに行くよ。
寝顔も奇麗だ。愛してる。 ユ・シジン>

「まったく・・・一緒に朝ご飯を食べたかったのに・・・」
モヨンは、メモを指で弾きながら文句を言った。

それでもモヨンは、鼻歌を歌いながら出勤の支度を始めた。



シジンは、特戦司令部の中に設えられたトレーニングルームで汗を流していた。
心を無にして集中しようとしても、昨夜のモヨンの肌の感触が蘇ってきて、がむしゃらにトレーニングマシンに向かっていた。

「どうしたんですか?マシンに恨みでもあるんですか?それとも、何か振り払いたいものでもあるんですか?」

声のした方に顔を向けると、ソ・デヨンがにやにやとしながらこちらを見ていた。

「どちらかと言えば振り払いたいものですね・・・そう言うソ上士もどうしたんですか?・・・休暇明けの朝なのに、こんなに早く。」
シジンが、荒い息でたずねると、テヨンは踵を合わせ敬礼をしながら答えた。
「上士ソ・デヨン。おそらくユ少領と同じ理由にて、休暇での浮ついた気分を引き締めにきました!」

この一見、無愛想で武骨な男は、年上ながらシジンにとっては誰よりも気の置けない仲間であり、最も信頼する部下でもあった。

「なーに、ミョンジュと浮ついちゃうようなことしたんですか?・・・」
 

「そうおっしゃるユ少領は、カン先生と会って何もしなかったんですか?・・・」
 

「そんなわけないでしょ!・・・モヨンさんが奇麗すぎて、髪がボサボサでも口紅が落ちちゃってても見てるだけでうっとりですよ・・・」
 

「何わけのわからないこと言ってるんですか!・・・うちのミョンジュだって軍服じゃない時は本当に天使ですよ」
 

「その天使にいつもやり込められてるのは誰ですか・・・あはは」
 

「まあ、否定はしませんね・・・今回も一緒にいた時間の半分は小言を言われてました・・・」

早朝のトレーニングルームに二人きりという気安さもあって、あからさまな言葉を掛け合いながら二人は体を動かしていた。



「えっ?・・・カン先生の元カレ?」
シャワールームにいきなりテヨンの声が響き渡って、シジンは慌てて人差し指を唇に当てた。
「しーしー!声が大きいですよソ上士!」

すると、テヨンは悪びれもせずに、今度は顔を近づけて声を低くした。
「本当に、カン先生の元カレに会ったんですか?」

「いや、正確には”会った”のではなく、”物陰からこっそり盗み見た”というのが正解です。」
「はあ?・・・」
テヨンが呆れた顔を向ける。
 

「まあ、結局モヨンさんには、ばれちゃったんですけどね・・・僕の彼女は、美人な上に勘も鋭いんです。」
「アルファチームのチーム長としてはいささか情けないですね。それに、その状況に美人は関係ありますか?」
テヨンがからかうように言う。
 

すると、シジンはテヨンに向かってにやりと笑いながら言った。
「そんな他人事のように言ってていいんですか?ソ上士!・・・モヨンさんの元カレが誰だったか忘れてるわけじゃないですよね?」

ソ・テヨンは、シジンの言葉ですぐにウルクでの出来事を思い出していた。

「まあ、ミョンジュをヘソン病院に行かせないことですね・・・モヨンさんの元カレということは、ミョンジュともわけありってことですからね」
シジンは、シャワーを終えて脱衣所へ向かいながら背後のテヨンに向かって言った。
すると、テヨンはライフルを構えるジェスチャーをしながら、大真面目な顔で答えた。
「やっぱりあの時、すぐに見つけ出して狙撃しておくべきでしたね・・・」

シジンは、目を丸くして振り返えったが、すぐに真顔になるとテヨンに向かって大きく頷いて見せた。

 

                            つづく


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

さて、いかがでしたか?

 

この「星降る島の…」は、純粋にドラマ本編に登場するキャラクターだけで書いています。

ただ一人、このお話しのキーパーソンとなる”ミン・ユンギ”だけは、ドラマの中ではモヨンの初恋の人として名前しか登場しない人物です。

 

そして、前記事のRainbow通信No.2で、最終回を見て「それでいいの?」と思ったことというのは、このドラマの中でヒロインのカン・モヨンが医療奉仕団として行った国、ウルクで体験する様々な出来事です。

崖から車ごと落ちたり、大地震に見舞われたり、拉致されて銃を突き付けられたり…他にもたくさん怖いことを経験したのに、なんだかそんなこと全然へっちゃらな感じで普通にハッピーエンドになっちゃったのが、どうも解せなくて…

それで、なんだか書きたくなっちゃったんですよね~。

 

まぁ、キューブの鈍った筆でどこまで表現できるかは怪しいところですが、そんなきっかけで書き始めたことを、ちょこっと心に留め置いて下さい。

 

さて、お話しは”起承転結”で言えば、まだ”起”の半分も行ってないと思います。

でも、このドラマを見た方が、この2話までのシジンとモヨンの会話などに「そうそう!こんな感じ!」と納得していただけたら嬉しいです。

 

良かったら、感想など聞かせてくださいね。

 

それでは、次回もそうお待たせせずにアップしたいと思います。

 

 

                            By キューブ

太陽の末裔