キューブは日本版でも西門さんと優紀ちゃんのエピソードは大好きでした。

 

 

2人の恋も実って欲しいってずっと思って観ていましたが、日本版ではどうやらそれは叶いませんでしたね・・・原作でも2人は結ばれないと聞いてとても残念に思っていました。

 

・・・が、しか~しビックリマーク

 

韓国版では、イジョン@キム・ボム君とカウル@キム・ソウンちゃんのカップルそのものに人気があったからなのか、2人の恋はどうやら叶いそうだな~という終わり方をしていました。

 

だから、私は叶えちゃいますドキドキ

どうか、キューブの暴挙をお許しください・・・あせる


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  ~F4 After 3year story~ -ソ・イジョン編-

 

 

 

「カウルヤン。どれがいい?・・・好きなの幾つか着てみてごらん」
俺は、スタイリストがチョイスして来たウェディングドレスを指差しながら言った。

 

「どれも素敵・・・イジョン先輩は、どれが似合うと思う?・・・」
カウルは、目を輝かせながらそれでもズラリと並んだドレスのひとつを手に取りながら聞き返した。


「とりあえず、それ着て見せてよ・・・ほら、早く!」
俺は、スタイリストに合図を送ると、カウルにフィッティングルームに入るよう促した。


2人で訪れたブライダルサロン。
俺とカウルは、奥のVIP専用の部屋でウェディングドレスを選んでいた。


―やっとここまで来た・・・長かったな3年・・・


俺は、部屋の隅に置かれたソファに座ってカウルが出てくるのを待ちながら、ふとこの3年の月日へと思いを馳せた。

 

―ねえ、カウルヤン。俺はいったいいつから君を愛していたんだろう・・・


ウンジェとのことがあった頃から?・・・
それとも、彼氏に振られた君を慰めた頃からだろうか?・・・


いや・・・それが愛だと気付いたのはずっと後のことだとしても、君は出逢った頃から確かに俺の心の中にいた。
だって、俺は今もまるで昨日のことのように、あの頃の君を思い出すことが出来るのだから・・・


出逢った頃の俺を、君はどう思っていたんだろう?
名声と金と女・・・若くして全てを手に入れているように見えて、本当に欲しいものは何一つ持っていなかったあの頃。
運命なんて信じないと口では言いながら、心の底ではずっと運命の人を待っていた・・・
そんな俺にとって唯一、心が許せて本当の自分でいられるのがF4だった。


あの頃の俺には、君の純粋な瞳は眩しすぎて真っ直ぐに見ることが出来なかったきがするよ。
それでも好きだと言ってくれた君を、俺はきまぐれに何度も傷つけたね・・・
今さら恐くてあの頃の気持ちなんて聞けないけど、君の真っ直ぐな心が少しずつ俺を浄化してくれたことは間違いない。


「ソ・イジョン様?・・・イジョン様?・・・」


俺は、スタイリストが何度も呼んでいる声に、はっと気付いて顔を上げた。
「悪い・・・考え事をしていた。」


「カウル様のお着替えが済みました」
スタイリストが、フィッティングルームの長いカーテンをあけると、真っ白なドレスに身を包んだカウルが現れた。
女の服を選んでやることなど以前の俺なら日常茶飯事のことだった。
そして、歯の浮くような褒め言葉で、女を喜ばすことなど朝飯前のことだった・・・のに・・・
俺は、カウルの姿を、何も言わずにただ見つめていた。
カウルの顔が次第に不安げな表情に変わっていくのを感じながらも、それでも何も言葉が浮かばなかった。
ついに、痺れを切らしてカウルが俺の顔を覗きこみながら言った。
「イ、イジョン先輩?・・・どこかおかしい?・・・」


「ううん、違うよ。見とれてた・・・あんまり綺麗で・・・」
それだけ言うのがやっとだった。
カウルは、頬を紅く染めて嬉しそうに微笑んだ。


―やっとだって?・・・この俺が?・・・


つい思い出に浸っていて油断したていたと自分で自分に言い訳しながら、なんとか気持ちを立て直す・・・
「そのドレスが気に入った?・・・でも、これも可愛いよ。次はこれを着てみて」


カウルが別のドレスを抱えてカーテンの向こうに消えるのを見ながら、俺はまたソファに腰掛けた。

それから、次々に3着のドレスを着ては首を傾げていたカウルが5着目のドレスを着てフィッティングルームから出て来た時は、他のドレスを着た時よりもずっと明るい表情で現れた。
「イジョン先輩!私これがいい!・・・自分でもすごく似合うって思うんだけど先輩はどう思う?」


少し興奮気味に鏡の前でくるくると回って見せるカウルに思わず目を細める・・・
胸元のすっきりとしたデザインに、ウェストの大きなリボンが映えてカウルの少し小柄な体によく似合っていた。


「うん、確かにすごく似合うと思うけど、まだ5着目だよ・・・まだたくさんあるのに他のも着てみなくていいの?・・・」
「はい、これがいいです・・・あっ、先輩。携帯で写真撮って。ジャンディにメールで送って自慢しちゃお!」


カウルは、意外に潔いところがある。
ウェディングドレスを選ぶ時くらいはもっと迷っても良さそうなものだが、こうと決めたら人の話しは聞かない。
真面目で、はっきりしていて、いつでも正しい。
出逢った頃は、カウルのそんなところが苦手だったような気がするが、今ではそれが彼女の魅力のひとつに思えるのだから恋とは不思議なものだ・・・


俺はカウルがフィッティングルームでドレスを脱いでいる間に、スタイリストに向かって指示を伝えた。
「じゃあデザインはこのドレスをベースにして彼女のサイズにピッタリに合わせて作って。それから生地はもっと良いものを。あと、次に来る時はアクセサリーと靴も幾つか選んでおいて」


ドレスを抱えて出て来たカウルが、俺とスタイリストの会話を聞いてきょとんとした顔をしている・・・。
そして、俺の指示に-かしこまりました-と、頭を下げたスタイリストにつられたように頭を下げると、笑っている俺を不満げに見上げた。
「わざわざ作りなおさなくても私これでいいのに・・・」


「だめだめ。俺の花嫁には最高のドレスを着てもらわないと・・・本当はデザインからって思ったけど、俺も忙しくてなかなか時間が取れないから、君に着せて気に入ったドレスでって思ったんだ」
「そんな、一回しか着ないのに・・・」
「まあ、いいからいいから・・・俺がそうしたいんだから好きにさせて」
俺は、とっておきの笑顔でカウルを見つめた。
それでも、まだ何か言いたげなカウルの肩を抱いてサロンを後にした。


サロンの前に停めていたアウディの助手席のドアを開けてカウルを乗せる。
そして、俺が運転席に乗り込むと、カウルが少しおどけた顔で-次はどちらへ?-と尋ねた。
今では、カウルも幼稚園で保育士をしているし、俺も個展であちこちを飛び回っていて以前のように気まぐれに会うことは出来なかった。
今日も、こうして午前中は結婚の準備に時間を取られてしまったから、やっとこれからが久しぶりのデートの始まりだった。


「そうだな・・・カウルヤンはどこに行きたい?」
俺が聞き返すと、カウルは少し考えてから-工房!-と明るく答えた。

 

本当なら、手を繋いで街を歩いたり、2人で買い物をしたり食事をしたりしたいはずなのに、カウルは2人の時間を俺の工房で過ごすことを好む。

それは、まだまだF4の知名度も人気も高く、どこへ行っても俺が注目されてしまって、ゆっくりデートを楽しむこともままならないから・・・

 

 

俺とカウルは、工房に到着すると、まずは奥にある窯の前に並んで座った。
火の入った窯の中では1300度で燃える炎が、時々火の粉を散しながら赤々と燃えていた。

 


「俺がスウェーデンに発つ前にここで会った時、カウルヤンはこの火を見ながら”幸せそう”って言ったよね・・・」
俺は、カウルが淹れてくれたお茶を片手に言うともなしにつぶやいた。

 

今日は、なんだか昔のことをやたらと思い出す・・・

 

「えっ?・・・う、うん・・・」
カウルの脳裏にも、もう7年も前になるあの日のことが蘇ったのだろうか・・・少ししんみりとした声が返って来た。


「あの時、俺は君の言葉を聞きながら反対のことを思っていたんだ。こんなに熱い炎で焼かれて、苦しい思いをしても外に出てきたとたんに誰にも目でてもらうことなく割られてしまうかもしれないってね」


カウルが何も言わずにこちらを向いたのがわかった。
俺は、炎から目を逸らさずに手を伸ばして彼女を抱き寄せた。

 

あの頃の俺は、ここから逃げることばかりを考えていた。
そして、あの頃の俺と同じように、手を痛めてそれでも陶芸家として復帰した知りあいを頼ってスウェーデンに行くことを決めた。
ウンジェとの恋も、兄との確執も、父のことも母のことも、全てを忘れて一からやり直したかった。
スウェーデンに拠点を置いて腕の治療とリハビリをしながら、新しく窯を作って満足のいく作品ができるまで・・・それにはどう考えても4,5年の時間が必要だと思っていた。


しかし、そう決心した心にもひとつだけ気がかりがあった。
それがカウルだった。
ウンジェへの恋を断ち切って、あらためて陶芸への思いに目覚めた時、俺の心にはすでにカウルが住みついていることに気付いた。
その想いを伝えに行った時・・・あれはジャンディが俺たちの前から忽然と消えてしまった頃だった。


―あの時、俺は君に振られてしまったよね・・・女に振られるなんて生まれて初めてのことだったよ。


<先輩の気持ちはわかっています・・・もう会いに行きません>


そう言い放って去っていくカウルに-君は何もわかってない-と思いながら俺は追いかけることができなかった。
だからスウェーデンに発つ前に-戻ったら一番最初に君に会いに行く-と言ったのは、俺の精一杯の告白。
君が会いに来てくれないなら、俺が会いに行くと・・・


そして、-もし君がまだソウルメイトを見つけていなかったら-と付けくわえたのは、俺の最後のプライド。
かっこつけたつもりだったけど、強がりにしか聞こえなかったかな・・・


スウェーデンにいる間、一日たりともカウルを想わない日はなかった。
それどころか日に日に募る想いを力に、あの苦しくて寂しい4年間を乗り越えた。
きっとカウルは待っていてくれると信じて・・・
帰ってきて、約束通り一番最初に会いに行った時、カウルが幼稚園の子供たちに-彼氏はスウェーデンにいる-と教えていたことがやけに嬉しかった。

 

「イジョン先輩?・・・黙り込んじゃってどうしたの?何か心配事?・・・」
俺の肩に頭を乗せて大人しくしていたカウルが、心配そうに俺の顔を覗きこんだ。

 

「いや、ちょっとスウェーデンから帰って来た頃のことを思い出してた・・・いろいろあったなって思ってね」
「ごめんなさい・・・」
「何で謝るんだ?・・・カウルヤンは何も悪くないだろ?それに今はこうして一緒にいられるんだから・・・」
俺は、カウルを安心させようと、肩を擦りながら微笑んだ。

 

カウルが謝るのにはわけがある・・・


スウェーデンから戻って、俺はすぐにカウルにプロポーズをした。
それは、4年間の想いをぶつけるように、ただもう離れてはいたくないという想いで・・・
もちろんカウルも同じ気持ちだと思っていた。
スウェーデンから戻った俺を、少しはにかんだ微笑みで迎えてくれたのだから・・・と。


しかし、思いもよらずカウルは俺のプロポーズを拒絶した。
生涯で女に振られたのは2度目だった・・その2度とも相手がカウルなのだから、笑い話にもならない・・・


「私にはムリです・・・」
プロポーズの言葉に対して最初にカウルが言った言葉・・・そして、驚く俺を真っ直ぐに見つめながら、カウルは目に涙をいっぱいに溜めて言葉を繋いだ。
「今でもイジョン先輩が好き。先輩も私を好きになってくれたのはすごく嬉しいけど・・・でも、もし先輩が私のものになるなら、私はきっとあなたをひとり占めしたくなってしまう。あなたから自由を奪ってあなたを苦しめてしまう・・・そういうの嫌いでしょ?だからこのままで、あなたが誰か素敵な人を見つけるまで

憧れの先輩のままで・・・」


俺は、カウルが走り去っていく後ろ姿を呆然と眺めながら、我が身を振り返り、両親のことを思い浮かべていた・・・父の浮気に悩まされ続け、自殺を繰り返した母。
あの時カウルが言ったことは、父と同じことを繰り返してしまうかもしれない俺を信じることができない不安な気持ちの裏返し。
そして、俺はカウルを引きとめるだけの自信が持てない自分の不甲斐なさに無性に腹が立った。


それから、俺は工房に籠った。
突然の俺の行動を心配してF4やジャンディが何度も覗きに来たが、俺は誰にも会おうとせずひたすら陶芸に没頭した。
カウルに出逢って、カウルを愛するようになって、大きく変化した俺の気持ちをただ形にしたかった。
ひたすら土と向き合う日が続いた・・・ただ無心でろくろを回しながら日々研ぎ澄まされていく感覚。
その中で、才能や技術ではなく、ただカウルを想う心だけで練り上げ焼き上げた器が出来た時には、1年という月日が過ぎていた。

 

俺は、やっと出来上がったその花器に『秋-カウル-』とタイトルをつけて、若手陶芸家の登竜門と言われているイタリアの陶芸コンベンションに出展した。
そして、俺は祈りを込めてその作品に賭けた。
もし、そのコンベンションで最高の賞が取れたなら、もう一度カウルにプロポーズしようと・・・

 

 

「そうだ!『カウル』戻ってきてるんでしょ?・・・」
カウルが、まるで俺の心を読んだように聞いた。

 

「ああ、工房にあるよ」
「わあ、もう一度ちゃんと見たかったの・・・」
カウルは、言うが早いか工房に向かって駈け出して行ってしまった。
俺は、窯を覗きこんで薪を数本放り込むと、ゆっくりカウルの後を追った。


カウルは、工房の隅に置かれた自分と同じ名の花器を愛おしげに眺めていた。
「個展やあちこちの展覧会に連れまわされて、やっと帰って来たのね・・・」


―君はあの時、何も言わなくても、この花器に込めた俺の想いをわかってくれたね・・・

 

そう・・・あれは、コンベンションの結果が発表された日だった。
俺の作品が金賞を受賞したことを知らせる新聞を握りしめて、カウルはこの工房に飛び込んできた。
あの時の涙でくしゃくしゃになったカウルの顔が今でも思い出される。
すでに精も根も尽き果てて、結果の知らせを受けたまま呆然としていた俺に、飛びつくように抱きついた彼女。

うつろな意識の中でその背中を抱きしめた時、俺は初めて受賞の喜びに体中が震えてくるのを感じた。

 

そして、あの日俺は初めてカウルにキスをした。
女に関しては百戦錬磨のこの俺が、たったひとりの女の唇を奪うのにそんなにも長い年月がかかるなんて・・・しかし、だからこそあのキスは2人のかけがえのない思い出になった。

 

外の喧騒もここには入って来ない・・・まるで俺たちの隠れ家のようなこの工房に2人きり。

報われた想いを噛みしめれば、ふと温かなものが心に込み上げる・・・

 

俺は、飽きることなく『カウル』を見ているカウルの後ろに立って背中からそっと抱きしめた。
幸せそうに微笑みながら俺を見上げた彼女の額に唇を寄せる・・・
「カウルヤン・・・ありがとう」
その瞳を見つめながら、自然とこぼれ落ちた言葉をすくい取るように次には互いの唇が重なった。
あの日のキスを思い出しながら、あの日よりもっと熱い気持ちを込めて・・・
そして、カウルは-私、何かありがとうを言われることした?-と言ってクスクスと笑った。

 

「この花器・・・ジュンピョのところの美術館に寄贈することにしたんだ」
俺は、カウルを抱きしめたまま、その耳元につぶやいた。
すると、カウルは俺の腕を解くと、体ごとこちらを向いて、俺を見上げた。
「どうして?・・・もう個展では展示しないの?・・・ジュンピョ先輩が欲しいって言ったの?・・・それにイジョン先輩の作品ならソウン美術館に飾るのが本当じゃないの?」
カウルの驚いた声と矢継ぎ早の質問に、俺は思わず苦笑した。
「ジュンピョはこんなものに興味はないさ・・・ただ、俺がそうしたいんだよ」
俺は、諭すように言うと、不満げに尖らせたカウルの唇にもう一度キスをして、さらに何か言おうとするのを遮った。


この花器に込めた想いは、手元に置いておかない方がいい。
なぜか、ずっとそう思っていた。


確かに、この花器を作ったことでカウルが今隣にいることは間違いない・・・
でも、この花器に込めた本当の想いは過去との決別・・・そして、カウルだけを愛し続けるという誓い。
だから、陶芸家ソ・イジョンの代表作としてだけでなく、俺を知らないたくさんの人の目に触れるところに置いておきたかった。
そして、何よりも俺の想いを誰かに託したかった。
この誓いが決して破られることがないように見張っていて欲しかった。

そう思った時、なぜか俺の脳裏にはクム・ジャンディの顔が浮かんだ・・・
元々はF4とジャンディが出逢ったことから、俺とカウルも出逢うことが出来た。
そして、ジャンディこそがF4とあの手のつけられない荒くれ者だったジュンピョを変えた張本人なのだから・・・


―ジャンディはク・ジュンピョだけじゃなく、俺の運命も握ってたんだな・・・

 

だから、ジャンディの近くに・・・もちろん、俺の気持ちをジャンディ自身も知りはしなけど。

 

・・・これが神話美術に寄贈を決めた理由。


カウルが、このことを知ったらどう思うだろうか。
俺の気持ちを喜んでくれるだろうか、それとも手元に置いておきたいと言うだろうか・・・
でも、今はまだ言わないでおこうと思っていた。


―だって、この恋はあまりにも俺に不利だ。


これで、ジャンディに加勢されたら、俺は完全に2人に頭が上がらなくなってしまうだろうから・・・


「ジャンディとは会ってる?・・・元気なのかな?」
俺は、何の気なしに聞いた。
すると、カウルは急にクスクスと笑いながら答えた。
「そうそう!・・・ジャンディったら、最近ジュニオンニにダンスやマナーを習ってるって言ってた」


「えっ?ジャンディがダンス?」
俺は、神話高校の卒業プロムでジャンディと踊った時のことを思い出した。
「ジャンディは少しは踊れるだろ?・・・それにしても何で急に・・・あっ、そう言えば神話から何かの招待状が来てたけどそれと関係があるのかな・・・」
俺は、昨日ポストに届いていた招待状のことを思い出しながら言った。


「あっ、でもこのことはジュンピョ先輩には言わないでね・・・」
「どうして?・・・」
「うーん、よくわからないけど、とにかくジャンディはジュンピョ先輩には内緒でダンスやマナーを習っ

てるって言ってたから・・・」
「ふーん・・・」


―これは、面白そうだな・・・


俺は、さして興味のなかった神話のパーティーにその瞬間出席することを決めていた。


「あっ!今先輩、よからぬこと考えてたでしょ?・・・そういう顔してる!」
カウルが、俺をからかうように言った。


「よからぬことって、なんだよ!・・・俺はただ面白そうだなと思っただけさ。何か秘密の臭いがするだろ?」
俺がニヤリと笑って言うと、カウルは-もう!-と言って俺を睨んだ。


「ジャンディは、ジュンピョ先輩を本当に心から愛してるのよ。・・・それがジュンピョ先輩にちゃんと伝わるといいんだけど、ジュンピョ先輩以上に素直じゃないからなあ。また喧嘩にならなきゃいいけど・・・」
カウルが、窓から外を眺めながら、ため息まじりに言った。

 

「じゃあ、カウルヤンは?・・・」

 

俺は、それが不意打ちだということを十分に承知しながらあえて聞いた。

「えっ?・・・」
カウルが、思った通りの表情をして俺を振り返る。


「カウルヤンは、俺のことを心から愛してる?・・・」
俺は、カウルの前に進むと手を取りながら、さらに尋ねた。


「先輩・・・そういう聞き方ずるいよ・・・」
カウルは、頬を膨らませながら、それでも-私だって・・・-と、囁くように答えた。


「俺も愛してるよ・・・カウル」

 

カウルの戸惑いと嬉しさの入り混じった顔をそっと胸に抱き寄せる・・・

こんな場面では、俺の方が絶対的に優位だね。

 

 

―先輩か・・・

 

 

カウル・・・君が、俺を”先輩”と呼ばなくなるのはいつなんだろう・・・

その響きは、君があともう一歩俺に近づいてこない微かな距離をいつも感じさせる。


それでも君はずっと俺の隣にいてくれると約束してくれた。

君は、俺の運命の人だから、こうして寄り添っていられればそれでいい・・・

 

俺は自分の弱い部分も醜い部分も全て君にはさらしてしまっているから、もう恐いものも隠すものもない。

 

ただひとつ恐れることがあるとしたら、それは君を失うことだけ。
 

だから、待つよ・・・いつか”先輩”が、もっと俺に近づく何かに変わるまで。
そして、約束するよ・・・永遠の愛を。

 

 

だって、今俺は君を愛することが出来てこんなにも幸せだから・・・

 


                              END