デイトレウソホント(その2)
株は税制上有利?
株を売却すると、その時点で利益か損失が発生します。利益だと譲渡益、損失だと譲渡損失ですね。
譲渡益が出た場合はそこに税金がかかります。税金のもとになるものを専門用語では「譲渡所得」といいます。税率は20.315%。内訳は所得税が15.315%、住民税が5%です。
最初は「税金高いなー」と思いますよね。10万円勝ったと思っても、手元に残るのは8万円以下なので。けっこうガッカリします。
でもですね、実は良い側面もあります。
それは、税率が一定、ということです。
例えばお給料にかかる所得税は、累進課税ですよね。所得に応じてどんどん税率が上がっていく仕組みです。よく「年収1000万円でも手取りを考えたら全然豊かじゃない」なんて話がありますが、それはこの累進課税のせいです。
株であれば、10万円儲けても、1000万円儲けても、税率は同じです。(もちろん取られる税金の金額は増えますが)
累進課税とは正反対の考えなのですが、公平と受け止める人もいれば、不公平と感じる人もいるようです。不公平との主張は、「大金を投資できるお金持も同じ税率なのはおかしい」ということですね。「所得の逆進性」といわれて一時期話題にもなりました。
それはさておき、株の税金の良いところは、もう一つあります。
それは……
確定申告をしなくてもよい
ということです。
株を始めるには証券会社に口座をつくる必要がありますが、その際、「一般口座」か「特定口座」のどちらかを選ばなくてはなりません。特定口座を選んだ場合は、さらに「源泉徴収有り」か「源泉徴収無し」かを選択することになります。
このうち、確定申告が不要になるのは、源泉徴収有りの特定口座、です。
(厳密にはほかも20万円を超えなければ不要、損益通算を行う場合は確定申告が必須、といった決まりがありますが、ここでは省きます)
源泉徴収有りの特定口座を選んでおけば、そこで納税が完結しますので、確定申告は不要です。
確定申告をしないと何が良いのかというと、
株の利益が合計所得に合算されない
という点です。
え? もともと株の税金は、ほかの税金と別じゃないの?
という指摘が聞こえてきそうですが、これはその通りで、株の譲渡所得は申告分離課税といって、例えば給与所得の税額計算には影響しません。
しかしですね、株の譲渡所得を確定申告してしまうと、「合計所得金額」や「総所得金額等」なるものに足されてしまうのです。これは、税額そのものが変わるわけではないのですが、思わぬところに影響を及ぼしてしまいます。
それが、社会保険料です。
例えば、国民健康保険料、ですね。こちらは総所得金額等が増えると、保険料が上がります。介護保険料もそうです。これは合計所得金額によって変わります。確定申告をしない限り、こうしたことは起こりません。
注意しないといけないのは、ふるさと納税をしたいと思ってうっかり申告してしまうようなケースですね。昨年までは所得税だけを申告して、住民税は申告しない「住民税申告不要制度」がありました。住民税を申告しなければ保険料には影響しないので、やる人も多かったと思います。しかし、残念ながら、こちらは今年からなくなりました。
なぜくどくどと確定申告をしないことのメリットを説くかというと、FXは源泉徴収有りの口座がなく、原則として必ず確定申告をしないといけないからです。(こちらも20万円以下うんぬんの特例は省きます)
FXは譲渡所得ではなく雑所得として扱われます。申告分離課税の対象なので、所得税の累進課税は適用されないのですが、合計所得などには影響してしまうんですね。
もっといえば、暗号資産は申告分離課税でもありません。雑所得なのはFXと同じですが、暗号資産は総合課税、つまりは恐怖の累進課税なので、稼いだらその分だけ税金を取られます。
こうした状況をみると、株はかなり恵まれた環境にあるといえますね。
株なんかやっていたってたいして儲からないんじゃない
そんなことを誰かに言われたら、
いや、でも、ほら、株って税金安くてすむから
と涼しい顔で諭してあげましょう!