8.(彼の祕密~)Misaki | 時間と日にちと曜日と自分と。

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頭に浮かんでは消える気持ちを徒然なるままに・・・

仕事が終わってから夕食を摂り、そのまま佐田岬に向けて彼と釣りへ行く。

釣りなんて、まともにしたことないから、何か失敗しやしないかとドキドキ。

「別にボーっとしといたらええがな。」

わたしの気も知らず、彼は呑気である。


釣り・・・いつぶりだろう?

そういえば、小学校の時にクラスのみんなや先生と、近くの島に行ったことがあったような?

その時に、男の子がギザミを釣って、なぜだかわたしのニックネームがギザミに・・・。

なんでやねん!!


高速道路は使わず、のんびり地道をドライブ。

彼が疲れたら代われるように、一応わたしも免許は持ってきた。

途中、餌などを買う為に、釣具屋さんに寄る。

彼が餌を選んでいる間、わたしはお店の中を探検。

すると、浮きを発見。

浮きって、いろんな色があって、すんごく可愛い。

いつの間にか後ろに居た彼が、「それをアクセサリーみたいに首からぶら下げたりもするねんで。」

「へ~!そうなんや!!ほんま可愛い!」

「ほな、行こか」

さっさと出ていく彼を追いかけて、クルマに乗り込む。

「今から岬に行くけど、海の鉄則は、生きて帰ること。やからな。」

ええ?そんなにハードなの???と思ったけれど、それは口にせず、

「そういえば、山もそうです。生きて帰ること、了解。」と応える。

弱い女の子と思われたくないような、足手纏いにはなりたくないような・・・

なんとなく、そんな気持ちが働いた。


岬に到着。

真っ暗でなんにも見えない。360°真っ暗。

そんな中、さっさと釣り具の用意を整え、「行くで~」と歩き出す彼。

行くったって、いったいどこへ!?

真っ暗だからよく分からないけど、どう見ても断崖絶壁・・・。

すると、どうやら小道があって、それがどこかへ(笑)繋がっている様子。

でも、やっぱり断崖絶壁・・・。

真っ暗な小道を、懐中電灯の灯りを頼りに歩いて行く。

「えっと、この辺に目印が・・・、あっ、あったあった。」

彼の進む方を見てみると、ややややっぱり断崖絶壁・・・!

「ここから下に降りるから。」

「えええっ!!!こ、こんなとこ、降りれるんですか!?」

「降りるねん。ゆっくり行くから着いて来て。」

「はいっ。」わたしはすっかり必死である。


ゆるゆる道無き道を降りていく。

ズルッ!!!

「わっ!!!」彼が滑って転んだ。

「だ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫、大丈夫。」

更に慎重に降りていくと、突き出した岩に到着。

よく見ると、多分、知る人ぞ知る釣り場なのだろう、えさが散乱している。

「今、時合ちゃうから、あんまり釣れへんやろな~。」独り言のように呟きながら、

彼はそそくさと釣る準備に取り掛かり、わたしは海に映った月の光に見とれる。

月の光が海に反射して、道になっている。

月の道を行けば、ここから月まで歩いて行けそう。きれい。本当にきれい。

よく見ると、大きなクラゲがプカプカと浮かんでどこかへ流れている。

最初は、ゴミ袋かと思ったけれど、すごく大きなクラゲだった。

半透明の体。ぷかぷか・・・。


彼は、ジーンズのベルトにタオルをくくりつけて、立ったまま糸を垂れている。

月の光と彼のシルエットを見つめながら、本当に静かな気持ちになって、深い深い呼吸をする。

あーしあわせだ。。。

彼が突然、くるっと振り向いて何か言いかけようとした時、魚が喰い付いたみたい。

「女と釣りは、両立できん。」と呟いて、釣ることに集中。

プププー。あーしあわせ。。。


朝方、だんだん空が白み始める。

すると、魚も活発になってきたようで、彼も忙しい。

「今なら、あんたでも釣れるから、やってみな。」

わたしの竿も用意してくれてたんだ。

餌の付け方を教えてもらって、海に投げる。

彼の方はしょっちゅう喰いついてすごく忙しそうなのに、わたしのはさっぱりだ。

彼は横目でちらっとこちらを見て、「それ、多分もう餌あれへんで。」

慌てて引き上げてみると、「ほんとだ!いつの間にっ!!」

「あはは。最初はそんなもんや。」

夜がすっかり明けて、彼の糸も静かになってきたので、釣りは終了。

食べても美味しくない魚は海へ還したらしく、今日の戦利品は一尾だけ。

釣り場の岩を後にして砂浜へ移動し、釣った魚をそこで料理する。

なんと彼は、お鍋や火の用意、調味料まで持ってきている。

そのお汁の美味しかったことといったら!ますます好きになっちゃうよぉ~~~!!

二人で砂浜に腰掛けて、朝の空の色を眺めながら食べる朝ごはん。

わたしは、この空の色を、一生覚えてこうと思った。