「蓮さん蓮さん蓮さん蓮さん・・・・よし!もう恥ずかしがらずに言えるわ、きっと。料理も万全だしあとは敦賀さんが帰って来るのを、じゃなくて!蓮さんが帰って来るのを待つだけね。」
敦賀さんを仕事へ送り出した後、自分も仕事へ向かい、急いで終わらせて帰って来た私は、今日のお誕生日会の準備を万全の状態にして、敦賀さんの帰りを待ち構えていた。
「ただいま、キョーコ。」
「おかえりなさい、蓮さん。お仕事お疲れ様でした。」
ただいまのハグとビズ。そしてカメラ。片手に社さんや親しい人からのプレゼントを抱え、それでもしっかりと私を撮影した敦賀さん。とりあえずは、にっこり微笑んでお出迎え出来たかしら。
「ありがとう。キョーコもお疲れ様。」
「ご飯の準備できてますよ。すぐに召し上がられますか?」
「う~ん。せっかくだから、あれ聞きたいあれ。」
「え~~~・・・・」
「何でもリクエストしていいって言ったでしょ?お願い。」
にっこりと微笑まれて、私に拒否権はない。なんであんな迂闊なこと言っちゃったのかしら。
「あの・・・その・・・蓮さん。ご飯にしますか?お風呂にします?それとも・・・・・わたし?」
「勿論キョーコ。・・・って言いたいところだけれど、せっかく準備してくれていたんだから、先にシャワーを浴びてくるね?」
「~~~~~~~はい。いってらっしゃいませ!」
くすくすと笑いながら去って行った蓮さんを見送って、熱くなった頬を押さえてへなへなとしゃがみ込んだ。日付が変わるまで私持ちこたえられるかしら?
「それじゃあ、改めて、お誕生日おめでとうございます。」
「ありがとう。」
二人交代でお風呂を済ませると、ワイングラスに、年代物のワインを注ぎ、乾杯した。
「すごい料理だね。大変だっただろう?」
「いえ。元々下ごしらえはしてあったので、それほどでもありませんよ。たくさん召し上がってくださいね?」
「うん。いただきます。」
「いただきます。」
今度はどんなことを言わせられるのだろうと、戦々恐々としていた私の心配をよそに、とても和やかに晩餐は続いた。今日あった出来事や他愛もない話をしながら、食事をしながら、時々敦賀さんがカメラを構える。そんな風にしながらデザートまで終えてしまった。
「さてと、そろそろ寝室に行こうか?」
食事を終えると、ひょいっと立ち上がった敦賀さんに手を差し出された。
「もう寝るんですか?珍しいですね。って、カメラも持っていくんですか?」
「うん。おやすみの挨拶までが、一日だろう。ぐっすり眠れるように協力してくれるよね?」
それもそうよねと、差し出された手を取り、立ち上がり、促さる侭、蓮さんの後に続いた私は、再度自分の迂闊さを嘆かされることになる。
「つつつつつつるがさん!?一体何をしていらっしゃるんでやがりましょうか!?」
そうよ!おやすみの挨拶でこの人が済むわけないじゃないの!
「蓮だよ、キョーコ。見ての通りだよ?わかるよね?」
「ワタクシメニハサッパリワカリマセンデス!」
横になった私に、またがりカメラを構え、にこりと爽やかなその笑顔は、悪魔の微笑だ。
「考えても見てよ。二週間だよ。二週間。俺がそんなにも長い間我慢できると思う?」
「勿論であります!大丈夫!我慢できますよ!」
だらだらと背中に嫌な汗をかきながら、即答する。
「キョーコ。嘘はダメだよ。本当に?本当にそう思うの?」
「ほ・・・本当ですよ?」
からからと喉は干からびたように引き攣る。それでもこくこくと必死に頷いた。
「ほ・ん・と・う・に?二週間も放置されたら仕事放り出してキョーコのところ行っちゃうかも、とか、電話でアンナ事やソンナ事をしたがるとか絶対に思わない?」
・・・ありえる。って違ううううううう!ぶんぶん首を振って恐ろしい考えを振り払った。
「さあ、キョーコ。・・・・・って言って?何でも言ってくれるんだよね?キョーコは、絶対言った事は破らないよね?」
耳元で囁かれた言葉に、くらりと眩暈がした。なんであんなことを言ってしまったのか!
言質をとられた私に残された道は一つ。
「・・・・・・キモチイイコトシテ?」
敦賀さんの誕生日はまだまだ終わらない。