時間は少し遡る。
俺の目の前で、エレベーターの自動ドアがシュッと音を立てて閉じた。ドアが閉まる瞬間、蓮改め久遠の背中とそれ越しにキョーコちゃんの姿がわずかに見えただけだったけれど、あれ絶対チューしてた!
「おいおい・・・・どうするんだよぉっ!」
披露宴をボイコットして、しけこんでしまった二人に俺が慌てても仕方がないんだけど!
「おっ・・・・社じゃないか。そんなところで何をしているんだ?」
「社長!!・・・・それにミスター・ヒズリ!!あの!!」
声を掛けられて振り返ると、社長と、久遠の父でもあるクー・ヒズリが二人肩を並べて立っていた。事情を説明しなければと思うのに言葉が出なくて、スイート直通のエレベーターと、お二人の顔を交互に見るしかできない。
「ああ・・・・切れたか。」
「・・・・やっぱりだめだったか。」
うんうんとお二人は頷きあっている。
「やっぱり半年お預けは無理だったな。」
「よく持った方だろう・・・・・二人一つ屋根の下だぞ?」
「いやいやいやいや!!そんな事言ってる場合ですか!どうするんですか!披露宴はもう始まるんですよ!?」
思わず声を上ずらせながら、抗議すると二人はにやりと笑った。
「大丈夫だ。Bプランに変更するだけだからな。」
「こうなることは想定済みだ。」
「は・・・・・?Bプランって・・・・・」
「そうと決まったら、のんびりはしていられんな。行くぞ。忙しくなるぞ!」
はっはっはっと笑いながら二人はどこかへ向かって歩き始めた。その後を、慌てて追いかける。
「いやいや、過去の経験から考えると当然の結果だったな。」
「何を言う!俺は流石に、式当日にとんずらはしなかった!前日にキャンセルしただけだ!」
「威張るな!次の仕切り直しは、俺が披露宴をプロデュースするからな。今回は久遠にいいところを持っていかれたからな。」
「何を言う。俺も一緒に参加するからな。可愛い子供たちの披露宴だぞ!
それよりも、今回のゲストには事情は事前に説明してあるし問題ないが、悲願達成祝いパーティも豪華料理が並ぶんだろうな。」
先を歩く、二人の会話に開いた口がふさがらない。久遠は自業自得だから仕方がないが、すべて筒抜けで披露宴をやり直しする羽目になるキョーコちゃんは、さすがに可哀そうで最上階のスイートを見上げて十字を切った。
「・・・・・・頑張れ。・・・・・二人とも。」