「さあ、キョーコちゃん。そろそろ、お風呂に入って寝ようか。」
「じゃぶ?」
社さんを送って、マンションに戻ると、もういい時間になっていた。子供は、もう寝る時間だろう。
「じゃぶ、やー!」
パタパタと走って、逃げて行ってしまう。どうも、お風呂もダメらしい。追いかけっこ再びだ。
「はあ、捕まえた。・・・・そうだ。いいものがあるんだった。」
じたばたと暴れる、キョーコちゃんを連れてバスルームへと向かった。
「これ、入れてごらん?」
小さなキューブを、キョーコちゃんに手渡す。
「やーっ!・・・・・う?」
「大きいキョーコちゃんにあげようかと思ったんだけど、特別だよ。これを、お風呂の中に入れると面白い事が起こるよ?」
まだ、空のバスタブを指さすと、キョーコちゃんはぽいっと投げ入れた。そのまま、給水ボタンを押してやる。
「うきゃぁー!あわ!あわ!」
キョーコちゃんに手渡したのは、試供品のバスキューブだ。最上さんにあげたかったのだが、下宿中の彼女は使えないと思い、いつかの為に取っておいたものだ。勢いよく泡立ちながらお湯がたまっていく。
「あい!」
「え?もう一つ?・・・いいのかな。」
「うっきゃー!」
両手を目をキラキラさせながら差し出されて、躊躇いながらもう一つ渡すと、勢いよくそれは放り投げられて泡がお風呂から溢れるほどになった。
やっと、大人しくなったキョーコちゃんの服を脱がせて、一緒にお湯に浸かった。このまま、一緒に洗っちゃえばいいだろ。
膝の上に乗せて、お風呂の泡で体を洗ってやる。
「れんれん!」
「ん?俺も洗ってくれるの?」
「あい!」
「うわっ!」
俺の膝の上で、手をバタバタ振り回して、泡が飛んでくる。二人して、泡塗れになりながら体を洗った。
「楽しいね、キョーコちゃん。」
「あい!」
ずっと、このまま一緒にいられたらいいのに。もしも、この子を誰も探さないのなら俺が一緒にずっと。あの時、社さんに、そう言おうと思って結局思いとどまったけれど。
「君は、一体誰なんだろうね。キョーコちゃん。」
答えは、やっぱり出ないまま・・・・・