ドキドキタイフーン 6
「・・・だめですよ。私なんかにそんな事言っちゃ。」
私は、意を決して敦賀さんに伝えた。
「・・・なんかじゃないよ。最上さんだから言うんだ。俺の事は好きになれない?」
「そういうことじゃなくて・・・。いつか、敦賀さんは世界に羽ばたく人でしょう?私となんか一緒にいたらおかしいです。」
私が封じ込めて抑え付けていた蓋はとっくの昔に空いてしまったけれど、いつか私を置いていってしまう人とお付き合いなんてできない。もうこれ以上、私を惑わせないで。
「別におかしい事なんて何もない。それに、そんな事は聞いてない。俺の事を愛せるかどうかを聞いてるんだ。
俺の事を愛せないならそういえばいい。ただ、一言嫌いだって言えばいいんだ。そんな回りくどいことを言わずに。」
どうして、そんな酷い事が言えるんだろう。嘘だって、そんなこと言えるはずがないのに。
「・・・どうしてそんな事言うの?いつか、私を置いてっちゃうくせに!そうしたら、また私は独りぼっちになっちゃうじゃない!相手の都合に振り回されて、手を振りほどかれるのはもう沢山なんです!」
「置いていったりなんかしない!俺は、君を置いてどこにも行ったりしない。確かに、いつか、父のようにハリウッドで認められる存在になりたいよ。でも、それはここにいたって出来る。オファが来たら行けばいいんだ。君が望んでくれるのなら、俺はちゃんと戻ってくるよ?」
彼は、私に言い聞かせるように辛抱強く語りかけてくる。
「・・・そんな、出稼ぎかなんかみたいに簡単に言わないでください。」
「うん。ハリウッドに行くのは簡単じゃないね。でも、その後の事は、案外簡単かもしれないと思うようになったんだ。久遠・ヒズリという人間が敦賀蓮という芸名を名乗るだけだ。君だって、京子という芸名を名乗っているだろう?」
あっさりと言われて、わからなくなってくる。そんな事、本当に可能なの?
「それに、俺があっちに定住することになっても、その時は一人では行かないよ。俺が、立っているところまで登ってきてくれるんだろう?それとも、あの言葉は嘘だった?」
「嘘なんかじゃないです!敦賀さんは私の目標なんですから!・・・でも、そこまでスケールの大きい事なんて思ってなかったし。」
「どうして?役者である限りどこまでも上を目指していきたいと思うだろう?」
「・・・それは、そうですけど。」
なんだか、だんだん話がそれてきてるような気がする。
「大丈夫。俺は、目指すものがあるから立ち止まることはできないけれど、君が追いかけやすいように、ちゃんと道は残していってあげるから。だから、そろそろ君の本当の気持ちを教えてくれないか?」
敦賀さんが言うと、本当にできるような気がしてくる。でも、それでも・・・。
「・・・でも、綺麗な女の人が敦賀さんの周りにはいっぱいいるのに。」
「君以上の女性になんて、会ったことない。」
「嘘です。グラビアアイドルとか、今共演している女優さんとか私より綺麗な人がいつも一緒にいるじゃないですか。」
敦賀さんは一瞬驚いて、それから情けなさそうに眉を下げた。