ドキドキタイフーン 3
「・・・・はあ。」
目の前にそびえたつ高層マンションを前にして、大きくため息をついた。・・・行きたくない。でも、このまま引き返すわけにもいかなかった。彼が私に手渡していったのは、このマンションの、最上階にある彼の自宅のカードキーだったのだから。予備はないと言っていた。これを返さなければ、彼は自宅に帰れなくなってしまう。
まだ、正体がばれたという確証があるわけでもない。だけど、着ぐるみを着込んでここへ来るわけもいかずに、今の私は最上キョーコそのままだ。
「女の子が、夜に一人でこんなところに立ってるんじゃないよ?」
「ひゃあっ!」
いきなり、気配もなく背後から声をかけられて驚いた。
「つつつ敦賀さん!車は!?」
きょろきょろと辺りを見回したけど、彼の立派なフェラーリは傍にはなかった。
「ああ。もう駐車場に止めてきたよ?帰ってきたときに、君がここで立ってるのが見えたから先に車だけ置いてきたんだ。」
車が通ったことなんて全く気が付かなかった。私、どれだけここでぼけっとしてたのかしら。
「ほら、早くいくよ?いつまでこんなとこに突っ立っていると不審者と間違われるよ。」
彼は、私の腕を取るとすたすたと歩きだした。マンションのエントランスに通じる自動ドアの前でぴたりと止まった。
「鍵、だしてくれるかな?預けただろう?」
当然のように手を差し出されて、私はそれを手渡した。彼は、自分の手に戻ってきたカードキーをじっと見つめた。私は、今まで彼をたばかっていたお叱りを覚悟して俯いたままぐっと目をつむった。
「・・・やっぱり君だったんだ。・・・行こうか。」
敦賀さんは、それ以上何もいう事もなくカードキーで施錠を解くと私の腕を引っ張ってエレベーターに乗り込んだ。重い沈黙の中、エレベーターは最上階まで上がっていった。玄関を抜けたら誠心誠意謝ってそのまま逃げてしまおうと心に決める。
「なっ!?」
私に土下座する暇を与えることもなく、気が付けば私は彼の腕の中にとらわれていた。
「なんで驚くの?責任とってもらうって、俺、言ったよね?ここに来たっていう事はそういう事だろう?」
「違います!私は、ただ、今まで黙っていたことを謝りたくて!」
彼の言葉に驚いて、慌てて否定した。
「・・・そう。だったら、君はここまで上がってくるべきじゃなかった。だって、君が言ったんだろう?さっさとモノにしろって。俺に愛を囁かれて堕ちない子なんていないって。最上さん、俺は君を愛しているよ?君も、俺に堕ちてくれるんだよね?」
「・・・・っ!?」
彼に真っ直ぐに射抜かれて私は言葉を返すことができなかった。