夢から覚めたら 20
今日は、ホームステイのお客様がいらっしゃる日。お父さん自ら車でお迎えに出向いて行った。
私と、ママは屋敷で待機だ。チャイムの音が鳴って、玄関に出迎えに行った。
「はーい・・・・!?」
ドアを開けた瞬間いきなり抱きしめられた。
「最上さん!・・・・・会いたかった。」
頭の上から、ありえない声が聞こえて息を呑んだ。
「こらっ!フライングはなしだ!いきなり抱きしめていいとは言ってないぞ!」
お父さんのお咎めの声とともに、名残惜しげに体が離れていった。私は呆然とその姿を見つめた。
「・・・敦賀さん。どうして・・・・?」
「君に会いに来たんだ。」
まっすぐ真剣な瞳で私を見つめてくる。
「だめ・・・です。仕事が・・・あるでしょう?」
彼は困ったように笑った。
「うん。・・・だから、ここに来るまでに3か月もかかってしまった。遅くなってごめんね?」
「それに、今日はホームステイのお客様がいらっしゃる予定で・・・。」
頭が混乱しすぎて、自分でも何が何だか分からなくたって来た。目の前の状況を回避することばかり考えてしまう。
「俺の事だよ?今日からお世話になります。」
「え・・・?でも、仕事を探しに来るって・・・?」
彼の言ってることが、さっぱり理解できなかった。
「うん。君と一緒にいたいから、こっちでオーディションを受けて仕事を見つけようかと思ってね。」
「・・・・・は?」
あまりにもあっさり言われて固まった。そんな私を見て彼はおもむろに足元に跪いた。
「最上キョーコさん。俺は、世界中のだれよりも、貴女の事を愛しています。
嬉しい時も、辛い時も、悲しい時も、いつだって君の隣にいたい。
どうか、俺と結婚してくれませんか。」
心臓が止まるかと思った。前置きもなくいきなりそんなことを言われて、じりじりと後ずさった。
「・・・ウソ。・・・何、馬鹿な事。・・・頭おかしくなっちゃたんですか?私なんかが、敦賀さんのような人と…結婚なんてありえないです。からかわないでください。」
ふるふると首を振るしかできない私に、彼は言葉を重ねた。
「嘘なんかじゃないし、からかってもいない。それに、なんかかじゃないよ?
俺は君にしか惹かれないし、君しか愛せない。最上さん、君だから結婚したいんだ。
俺が、君の事を愛しているのは、とっくの昔に知っているだろう?」
確信に満ちた声で、言われて息を呑んだ。
「あの晩、俺が出会ったのは君だろう?俺の愚かな行為のせいで、君をたくさん傷つけた。
酒の勢いがなければ、本音をさらせない臆病者だ。最初に君に思いを告げなきゃいけなかったのに。
それでも、やっぱり君の誰よりも近い存在でありたいんだ。」
「最初から知ってて声をかけたんですか・・・・?」
最初から知っててずっと黙って、私を騙してた?
「いや、情けないことに気づいたのは君が俺の前から消えてしまった後なんだ。
ただ、本当は気づいていたのに自分を騙していたのかもしれないとも思うんだ。
だからこそ、君に本当の名前を呼ばれて、君の名前を呼ぶことを許されて、駄目だと思ったのに止まらなかった。知っていたとしても、俺のしたことは許される行為ではないけれど。
本当にごめん。いきなり母親になってしまって怖かっただろう?」
辛そうに、私を労わるように声をかけられて、私はその場にへなへなと座り込んだ。