王宮10周年!! | てんじゅのひとりごと

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主にイケメン王宮の呟き、自身の創作のブログになります。私自身、妄想好きなので創作は暴走するかもしれませんが、そのあたりは温かい目で見て頂けると光栄です。最近はイケミュをきっかけにRush×300の結城伽寿也君にもハマっていますwww

王宮10周年おめでとうございます。
すっかりご無沙汰になってしまいましたがw
何かお祝いはしたいと思っていて、久し振りにSSを書いてみました。

だいぶ自己解釈で書いている部分が多いですが・・・。アランのシュガー√の10年後のアランとレオとプリンセスを書いてみました。こんな風になっていたらいいなという私の願望も込めて・・・。

これからもひっそりと王宮を愛し続けていきます。

「変わらないもの」

アランはアリサと子供達を連れて久しぶりにウィスタリアの街並みを見下ろせる丘に来ていた。ここではアリサの存在は無い事になっている為にアリサの口から「ウィスタリア」という言葉を口にしなかったが、先日アリサから「あの丘に行ってみたい」と言い出し連れ出したのだ。10年もの月日が経ってもこの丘の上からの景色は変わっていなかった。
ここはアランにとっても感慨深い場所。アランはアリサと戯れる子供達を遠目に木陰に寝そべり心地良い風に流されて行く雲を見つめながらアリサと出会った頃をふと思い出す。

(大切なものは自分で守る)

両親を失った時からその事だけを思ってきた俺にとってアリサとの出会いは今にしてみれば必然だったのだろう。蔦を伝って城に入ろうとする奴は初めてだったが、こいつの純粋さと懸命さは一目で何となく感じた。でもまさかプリンセスに選ばれ自分が護衛になるとは思いもせず初めは「どうせすぐ逃げ出す・・・」と思っていたのに意外にも骨のある奴で時に浅はかな所もあったが、そんなアリサを側で見ているうちに惹かれている自分がいた。でも「大切なもの」は作らないと俺はあの日から決めた・・・。

両親の事が大好きだった。父も母も聡明な人で憧れでもあった。優しさに包まれ家族4人いつまでもこんな時間が続いていくと思っていた。でもそんな日々は突然終わりを迎えた。残ったのは両親をも飲み込んで真っ黒になった家とレオと俺。そして・・・幸せな家族との時間を刻んでいた壁掛け時計。情けない事に家から持ち出せたのは焼け焦げた跡の残る時計だけだった。変わり果てた両親の温もりが僅かに残る手を握りしめ、両親を連れ出す事もこんな壁掛け時計しか持ち出す事が出来なかった無力な自分を呪って泣く事しか俺は出来なかった。そんな俺とは対照的にレオは落ち着き払っていてそんなレオの態度が俺を余計に苛立たせた。二人で騎士になる夢は両親を失ったと同時に散った。
それからの俺はただただ強くなってこの手で大切なものを守れるようになる事だけを思って生きた。守れるようになるまでは「大切なもの」は持たないと・・・。

(大切なものか・・・)

アランは左手を空に伸ばし手を握って拳を見つめた。
両親は何故自分達を残したのか、何故何も話してくれなかったのか。そんなに自分達は頼りなかったのか・・・。悔やんでも悔やみきれず答えの無い道を彷徨っていた幼い自分。
でも今の自分ならその答えが分かる様な気がしている。
ずっと一緒に居たいと思えたアリサと、その間に生まれた我が子。たとえどんな事があっても自分が守りたいし巻き込みたくはない。その為なら自分の命さえも惜しまない。きっとあの時の両親の心境も似た物があったに違いない。捨て身になっていた時期もあったが両親が守ってくれたこの命も大切にしなくてはいけないと今は思っている。それは昔あいつにも言われた。

(まずは自分を守れよ・・・)

「アラン呼んだ?」

聞き覚えのある声で現実に引き戻され視界の隅に入った姿に大きく溜め息をついて顔を背ける。

「別に呼んでねーよ。お前はエスパーか」
「エスパーってほどではないけどアランが考えていそうな事くらいは分かるよ」
「勝手に人の頭の中を覗くな」

ふっと笑ってアランの隣に腰を下ろすレオ。レオも変わらず官僚として城に残っている。

「きっと俺達はアリサちゃんに救われたよね・・・」
「ああ・・・」

二人の間に沈黙が流れる。しかしそんな時は大抵二人とも同じ事が脳裏に浮かんでいる。

「大切にしなよ、アラン・・・」
「あんたに言われるまでもない。どんな事があってもアリサは離さないから安心しろ」
「俺にとっても大切な義妹だからね。その気になればいつだって・・・」
「あんたまだそんな事言ってるわけ?いいかげん鬱陶しいんだけど?」
「俺は諦めが悪いんだよ。ライバルがいれば二人の愛は燃えるでしょ?」
「はぁ?ばっかじゃねーの・・・。ってよくそんな事を真顔で言えるよな・・・」

その言葉に吹きだすように笑うレオ。ここ何年かでレオもよく笑うようになった。そんなレオにアランも内心はほっとしている。アリサと出会った頃の俺達からは今の関係は全く想像が出来なかったと思う。アリサのおかげで俺達の関係も少しずつ「兄弟」としてお互い関われるようになってきていた。
復讐を糧に生きていたレオと守る事に固執していた俺。それゆえ自分を守る事に欠けていた俺達の「生きる糧」となってくれたアリサの存在は俺達にとって愛おしいとも言える。

「レオー!!」

遠くから子供達のレオを呼ぶ声がする。子供達の呼び声でアリサはこちらに振り返りレオの存在に気付いたらしくこちらに小走りで向かってくる。

「さて、可愛い甥っ子達がお呼びだ・・・」
「頼んだ・・・」

それに答えるようにレオは片手を上げてアランの元を離れてアリサと子供達に向かって歩いて行く。

「アラン、レオも呼んだの?」

息を切らして子供達の元から戻って来たアリサは寝そべっているアランの隣に腰を下ろす。

「いいや、あいつが勝手に来た」
「双子って不思議な念みたいなのがあるのかな?」
「そんなのあったらたまったもんじゃねえよ・・・」

そっか・・・とくすくす笑うアリサ。そんなアリサを横目にアランはこの笑顔を大切にしたいと思った。アランはムクっと体を起こし愛おしい人の名を口にする。

「アリサ?」
「ん?」

アランは手を伸ばしアリサの頭の後ろに手を回し引き寄せると優しく唇を重ねた。
そっと唇を離すとアリサは顔を真っ赤にして俯いた。

「あのさ・・・いつになったら慣れるんだよ」
「だって不意打ちが多すぎるんだもん、アランは・・・」
「不意打ちだから良いんだろ?」

アランはニヤリと笑うと顔を赤らめたまま脹れっ面をしているアリサを抱き寄せて耳元で囁いた。

「これからもよろしくな、アリサ・・・」

悲しい記憶の残る壁掛け時計は今はアランとアリサの住む家のリビングで幸せな時を刻み続けていた・・・。

~END~

拙い文章ですがお読み頂きましてありがとうございました!!